企業事例 ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン 全社員の底上げと ハイポテンシャル選抜育成の 二重構造で組織力を高める
人事部の中にタレントグループを設置し、グローバルで横断的にタレントマネジメントを行うブリティッシュ・アメリカン・タバコ。
その目的は、企業目的を達成できる人材を、あらゆるレベルで育成すること。
全社員を対象に、毎年行われる目標管理と、それに基づく能力開発計画。
そして経営トップが集い、ハイポテンシャル人材を選抜し後任人事計画を練るタレントレビュー。
この3つが同社のタレントマネジメントの要となっている。
企業目標達成のため全体を横断的に統括
ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(以下、BAT)は、日本でも人気の高い「KENT」「Lucky Strike」「KOOL」「Dunhill」などの主要ブランドを有する、世界第2 位のマーケットシェアを持つたばこグループである。英国に本拠を置き、日本では1984年から事業をスタート。2001年には、グループの日本法人としてブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン(以下、BAT ジャパン)が設立された。現在、日本には40種超の紙巻きたばこを供給している。
複雑かつ競争の激しいたばこ業界で、同社が年々シェアを伸ばし続けている背景には、定評のあるブランド力と、それを支える人材の力があったからに他ならない。そして、その人材の実力を遺憾なく発揮させているのがタレントマネジメントなのである。
タレントマネジメントは、BAT の人材に対する考え方の中心にあり、人材戦略の要でもある。世界各地の支社には、タレントマネジメントを担うタレントマネジャーを中心としたタレントグループが人事部門に設置され、優秀な人材の採用から教育、グローバルな視野で人材を有効活用していく施策が推進されている。BAT ジャパンのタレントマネジャーである西田知希氏は、BAT グループのタレントマネジメントの考え方について次のように語る。
「タレントマネジメントと一口に言っても、企業によってその定義はさまざまです。BAT では、従来の人材開発よりも大きなフレームとしてとらえています。これを簡単に表現すれば、採用、能力開発、評価、配置・活用など一連の人事プロセスを包括的に進め、会社の成長に戦略的に寄与していくための手法と言えます」
BAT では現在、「たばこ業界のリーダーとしての地位を量と質の両面で獲得する」というビジョンを掲げている。タレントマネジメントは、そのビジョンを実現するための非常に重要な柱となっているわけだ。
「会社のビジョン実現のためにビジネスを継続して成長させていくには、『ブランド』と『人材』という2 つの分野の継続的な強化は欠かせません。ですが結局、ブランドは人材が創り上げていくものですから、何より重要なのは人材です。そのために我々は“質の高いタレントパイプラインを持ち続ける”という目標を持っています」(西田氏、以下同)
これを成しとげるためにBAT が進めているのが、次の2 つである。
①あらゆるレベルに優秀な人材が継続的にいること
②部長クラス以上のポジションに対して、常に短期・長期的な後継者がいること
従来の日本企業のように、それぞれの人事関連部門が縦割りで施策を実施していては、この目標を達成することは難しい。先に述べたように、採用、能力開発、評価、配置など一連の人事施策を、企業のビジョン実現に直結するように包括的かつ一貫して進めていくことが必須である。そこで登場するのが、タレントマネジメントである。