企業事例 日本エマソン 絶対評価の カラーチャートで 人材の全体最適化
過去20年にわたりM&Aを繰り返して急成長し、グローバル展開を進めてきたエマソン。
それを支えたのが、1970 年代から導入されていたタレントマネジメントだ。
ユニークなのは、人材のパフォーマンスが一目でわかるカラーミーグリーンチャート。
この評価シートをもとに、トップマネジメントが人事異動・人材育成について話し合うことでハイポテンシャルを発掘し、次世代リーダーの育成、人材配置の最適化につなげることができる。
日本エマソンの土屋純代表取締役は、エマソンのタレントマネジメントこそ日本企業に最適だと言う。
急成長を支えたタレントマネジメント
2009 年のフォーチュン誌で「最も賞賛される企業」のエレクトロニクス部門2 位にランクインしたエマソン。米国ミズーリ州セントルイスに本社を置く同社は、創業1890 年という米国屈指の長寿企業だ。
プロセス制御や空調技術、ネットワークパワー、モーター事業などで60 を超える独立した事業部隊を全世界に展開。昨年9 月期の売上高は248億ドル(約2 兆4000 億円)、社員数は14 万人に及ぶ。40 年以上にわたる増収増益に加え、2008 年まで50 年超の増配を続けている。
このダイナミックなグローバル成長を支えてきた人事政策が、他ならぬタレントマネジメントである。日本エマソン代表取締役の土屋純氏はその仕組みについて次のように話す。
「当社は過去20 年間に急速に発展した企業です。M&A によって事業基盤を200 カ国以上に広げ、グローバルな展開をとげました。
とはいえ、昨年秋以降の世界的不況により、今年度の売上高はやや縮小することでしょう。社員数も縮小傾向にあります。しかし、リーダーとなる人材は依然として不足しています。優秀なグローバル人材を抜きにして、今後の成長はありえません」
リーダーはまだまだ必要とはいえ、同社のミドルマネジャー以上の人材は在職年数がかなり長い。“定着率の高さ”は、同社の大きな特徴の1 つだ。その最も大きな理由が、タレントマネジメントである。
「人材を大切にするという会社の姿勢、メッセージを打ち出せたことが大きかったと思います。また、今後の成長の源泉となる人材を確保するうえで、タレントマネジメントは、ますます重要な意味を持つといえます」(土屋氏、以下同)
エマソンのタレントマネジメントの導入は1970 年代まで遡る。当初の目的は、優秀な人材を定着させることに尽きた。そのためには、将来性のあるハイポテンシャルな人材をいかに早く見出し、適切なローテーションに乗せていくかが重要だった。やがてそれは、より幅広い意味を持ち始め、組織全体の円滑化、活性化に不可欠な人事政策となったという。
現在エマソンにおけるタレントマネジメントの目的は次の4 つ。「人材の見える化の促進」「次世代リーダー候補の発掘」「適材適所の人員配置」「ローテーションを通じた人材育成」である。これらの目的を達成するため、具体的にどのようなタレントマネジメントを実施しているのだろうか。