連載 HRD Professional Road 人材開発プロの道 最終回 人材開発プロフェッショナルの あるべき姿を考える
いよいよ本連載も最終回である。連載のまとめとして、激変する環境の中での「人材開発のプロへの道」についてもう一度考えてみたい。
そして、最後に本連載全体の振り返りを行う。
再び、人材開発部のプロとしてのあり方を問う
100年に一度と言われる経済環境の中で、人材開発担当者はどのようなスタンスで活動したらいいのだろうか。経済環境が好転した時に、企業の競争力は劇的に変わっていることだろう。そういう意味からも、人材開発担当者にとって、今が最も重要な時期である。厳しい環境だからこそ、今最もやるべきことは何かを見極めることは、人材開発担当者の「知恵の見せ所」であり、「知恵比べ」である。この活動の結果が景気回復後の企業力の格差となって表れることだろう。
人材開発担当者としても知恵を生み出すこのプロセスを通じて成長し、プロ化していくことが期待される。
●日本企業における教育の変遷
人材開発担当者のプロ化を考えるに当たって、現在人材開発部が置かれている環境を整理してみたい。
図表1 の「日本企業における教育の変遷」は、時代ごとに企業がどんな考えを持ってどこに教育投資してきたかをまとめたものである。
1980年代は、日本的経営が世界から注目され、「Japan As No.1」と言われた時代である。その時の基本コンセプトは、「強い職場と高いコミットメントが競争力の源泉となる」といったものだ。強い職場の柱となる管理職を、管理職としてきちんと機能させるために、教育施策としては管理者研修を中心とした階層別教育が展開された。そして現場では、職場が自立的に問題解決を行う小集団活動が活発に行われた。教育的視点から言うと“階層別教育の全盛期”である。
1990年代は、「高い能力が高い成果を生み出す」との考えのもとに、職能資格制度の再構築が一種のブームであった。教育の重点も役割や機能から能力へと移っていった。階層別教育から目的別(能力別)教育へ、そして個人の能力強化のために個々人が必要な教育を選ぶ選択教育への比重が高まっていったのである。 1990年代の後半は、コンピテンシーのブームとなり、潜在的な能力開発から顕在的な能力開発へと対象は変わったが、1990年代は“選択教育の黄金時代”と言っていいのではないだろうか。
21世紀を迎え、時代はグローバル化と変革の時代を迎える。グローバル化と変革を推進する強力なリーダーシップが求められ、ビジネスリーダー育成が教育の最重要課題となっていった。成果主義と歩調を合わせるように、時代は“一律教育から選抜教育”へと移っていく。
このような変遷をたどり、今まさに“新しいマネジメントの探索”が行われている。日本企業の強みであった職場や現場に異変が起こり、自信と誇りに満ち溢れていた現場や職場は疲弊して、働きがいも喪失している。それに加えて変化のスピードアップ、企業間競争の激化、景気の後退などの外部環境の変化もあり、どの企業でも課題が山積みではないだろうか。
このような背景から多くの企業が、教育体系や階層別教育の見直しを行っている。管理者の強化、若手社員の長期的な視点に立った教育が現時点では検討の中心になっている。なぜなら一部のリーダーが引っ張っていくといった考え方では変化に対応しきれず、“総力戦”に様変わりしつつあるからだ。あらゆる階層がきちっと機能することが求められているのだ。
●プロが実践するべき3つの点
そこでこのような時代にプロの人材開発担当者として、以下の3 つを実践することを提案したい。
①人材開発部の原点に立ち返る