論壇 多様な学習環境を提供する eラーニングが変える個別学習
企業の教育部門は現在、個々人に合ったコンテンツでの個別学習に注視している。
それは、企業において社員個人の役割が、ますます重要になってきているからであろう。
しかし、個々人の拠り所となる知識や情報は、変化の激しい現代社会においては、わずか数年で使い物にならなくなるものさえあるという。
とはいえ、企業が社員の学習を個別に支援するのは不可能に近い。
もはや、集合研修や横並びの決まり切った学習プログラムだけでは、個人の能力を高めることはできないのである。
社員1人ひとりが主体的に学べる環境を整備することこそ、今の企業がなすべきことではないだろうか。
情報社会・知識社会に移行しつつある現在、企業の課題は、競争の原動力となる知識をいかに創出し、共有するかにある。そうした中で求められているのが、「専門的な知識」ばかりでなく「職業的な知恵」を身につけた「知的専門家」である。これが企業における個人の役割をますます重要にし、それに伴う個別(個人)学習の需要も高まっている。
新しい局面に対応するための教育や学習は不可欠である。とはいえ、情報や技術が5 年で陳腐化すると言われるIT 業界のようなところでは、技術者は毎年自分の技術の20%を新しく学んだことによって刷新していかない限り、5 年後にはすべての情報・スキルが役に立たなくなってしまう。業界や職種が異なっても、多かれ少なかれ同様のことが言えるだろう。こういった観点からも、個人が学び続けることが重要なのである。
また、自学自習である個別学習には学ぶ側の積極的な意欲がなくてはならないものである反面、学ぶ環境が整っていなければ継続は難しいことも避けがたい事実である。そこで本稿では、個別学習と学習環境について考察する。
個別学習の課題を一掃したeラーニング
個別学習の特徴は学習者に主導権があることだが、一見手軽そうなこの学習方法も、学習者が自分の責任で計画的に学習を遂行しなければならないという難しさをはらんでいる。それを効率的に進めるのに役立つのがe ラーニングだ。e ラーニングの登場は、個別学習の環境を根底から変えた。
e ラーニングが登場する前の個別学習方法・ツールといえば、書籍やラジオ・テレビでの学習や通信教育などであった。通信教育については、添削指導があるという意味で双方向性はあるが、その他の過去の個別学習のほとんどが “一方通行”であり、学習プロセスも学習者まかせ。したがって、学習者は孤立状態で学習しなければならなかった。ここに個別学習の大きな課題がある。孤独であるがゆえに、最後までやり通すことができるか否かが大きな壁になっているのだ。実はe ラーニングは、その課題克服のための仕掛けを取り入れた、新しい個別学習のツールなのである。
●学習プロセス
すでに述べたように、e ラーニング以前の学習方法では、学習のプロセスそのものも学習者次第であり、それに対する支援はなかった。しかし、自学自習で最も困難な局面は、わからない箇所でつまずいた時である。従来の学習方法、特に通信教育以外のものではこの解決策を提供できなかった。しかしe ラーニングでは、ネットの双方向性と学習履歴の蓄積という機能を活かし、その人の学習段階に合わせて支援を行うことができる。
●学習科目の独自性
書籍やラジオ・テレビなどによる学習では、学ぶ内容は当然ながら全員同じである。したがって、学習者が本当に学びたいと考えている内容や学び方を選べないのが実情だ。本当の意味での“個別学習”になっていないのである。その点、e ラーニングでは、学習者の実力に合わせて必要な項目だけを学習できるため、さまざまな個別学習を行うことが可能である。
●学習者の孤立化
先述したように、これまでの個別学習では、学習者が孤立したまま学習するという課題を解決できなかった。しかし、e ラーニングではネット環境の中で、協同学習やコミュニケーションも実現され始めている。
このようにe ラーニングには、個別学習におけるさまざまな課題を解決する仕掛けが用意されているのである。