連載 人事担当者のための正しいメンタル不全対策 第 10 回 急増する“現代型うつ”が うつ病である理由
今まで9 回にわたり、メンタル不全についての概説と予防策、さらには適切な職場復帰支援などについて説明してきました。こうした、従来よく見られたメンタル不全には、職場のストレス要因も強くかかわっているため、職場から離れて治療を行うことが有効でした。
しかし、昨今の職場では、これらの問題とは少し異なるタイプのメンタル不全も急増してきており、すでに頭を悩まされている人事労務担当者もいらっしゃいます。その代表的なものが、今回から3 回にわたってご紹介する「現代型うつ病」です。専門的には「ディスチミア親和型うつ病」と呼びますが、「未熟型うつ病」や「ニュータイプうつ病」などとも呼ばれています。今回はまず、現代型うつ病の典型的な症例を見てみましょう。
【症例】H 氏 26 歳・男性(大手製造業 設計技師)
父親は大手企業の取締役、母親は専業主婦という恵まれた環境下で育ったH 氏。小学生の時から進学塾に通い、有名私立大学の附属中学校に進学。運動部に入部し、高校1 年生の時には全国大会に出場するなど、周囲から期待される存在だった。しかし、高校2 年生の時、大会中の事故により骨折。これをめぐるH 氏の家族と学校間のトラブルがきっかけで、その運動部は退部した。