連載 調査データファイル 第95回 地方企業に見る若年社員戦力化のポイント 若者教育のキーワードは 叱る、鍛える、評価する
就職が決まってもすぐに会社を辞めてしまう若者が増えている。それ以前に、若者がなかなか定職につけない(つかない)という問題は1990 年代から進行し続けている問題だ。巷にフリーターが増加し、ゆくゆくは社会の重荷になってくるという懸念はもう誰の目から見ても明らかな事実となった。若者が定職に就かないのは社会のせいか、はたまた教育やしつけのせいか。いまどきの若者に企業教育を施し、人材育成の末に戦力化させている北海道・帯広市のヨシモトを取材し、若手教育のツボを探った。
1.入社後3年間の離職率は“七五三”
経済・雇用情勢の悪化に伴って、2010年4 月の新卒採用、とりわけ高卒者の就職難が深刻化しつつある。特に地方都市では、大卒が6 割前後、高卒が3 割前後といった就職内定率にとどまっている。就職や進学できなかった若者は、フリーター化して職業能力を高める機会を失ったまま年を重ね、まともな職業生活を送ることが極めて困難になってしまう「年長フリーター」として滞留する危険性が高まってきている。
実際、フリーターの推移を見ると、1992年を境として1993年以降増加傾向に転じ、景気回復が鮮明化した2004年以降減少に転じている(図表)。つまり、バブル経済崩壊後の不況過程でフリーターが増加してきたわけであるが、それは1990年代に進行した円高に伴う国内工場の海外移転による製造業の雇用減少を契機に、若者の雇用機会が大幅に奪われたからだった。
新規高卒求人は、バブル経済崩壊直後は120万人強であったが、その後急激に減少傾向に転じ、最近では20万人強にまで激減している。さらに製造業の雇用減少をサービス業などで吸収できず、しかも正社員から非正社員への大幅なシフトが起きている。
なお、厚生労働省と内閣府の数字が大幅に異なっているのは、フリーターの定義が違うからである。厚生労働省は「正社員になりたくない人」を対象としているのに対して、内閣府は「正社員になれない人」も含んでいるため、人数が大幅に増加している。
つまり、厚生労働省の統計は、意図的にフリーターになっている人だけを対象としているのに対して、内閣府は仕方なしにフリーターになっている人も含めた数字である。したがって、このたびの不況によって今後増える可能性が高いフリーターの多くは、実質的には、内閣府の定義に沿った「正社員になれない人」が占めることが予想され、その数も急増すると思われる。
筆者のようなオジサン世代から見ると、こうした社会構造の変化が色濃く反映していることはわかっていても、どうしても「最近の若者はどうなっているんだ」といった感覚が強まってしまう。
最近の若者は、身なりやヘアースタイル、挨拶や礼儀作法といったことに問題がある者が多く、勤勉な日本人のDNA を受け継いでいない者も多いように思われる。また、せっかく正社員で入社しても、雇用保険のデータを解析すると、入社後3 年間で中卒は7 割、高卒は5 割、大卒は3 割が離職しており、「七五三」と称して問題視されている。
職業観や仕事意識が醸成されていない若者を、会社という組織に馴染ませ、かつ仕事のできる人材として戦力化していくことは、かなり難しくなってきているということであろう。社員教育や仕事のやり方次第で、すぐに離職してしまうといった問題に直面してしまうのが、目に見えているからである。