従業員満足を重視した組織づくり 働く人を幸せにする会社
約300社のトヨタ系列の販売会社の中で、顧客満足度ナンバーワンを連続達成しているネッツトヨタ南国。その原動力は、企業は社員が仕事でも幸せを感じられるようにすべきだという横田英毅会長の信念にある。人間性を尊重する組織づくりが、社員が“やりがい”を感じるポイントになる。
やりがいが感じられる会社にする
企業にとって最も大切なものは、ES(従業員満足)だと考えている。我々はこのES を向上させるためにCS(顧客満足)向上に取り組んでいる。お客様が喜んでいる姿を見れば、社員のモチベーションが大きく高まるからだ。ところが昨今では、CS 重視を謳いながらも、利益追求のためのCS と位置付けて、ES と関連付けていない企業があまりにも多い気がする。
人は何のために生きているのか。それはひとえに“幸せ”になるためだ。これに異論のある人はいないだろう。仕事は、それを実現する手段であり、目的でもある。それでは、多くの時間を仕事に費やす働く人にとっての幸せとは何か。それは、仕事を通じて幸せを感じられること。つまり、仕事に“やりがい”が感じられることではないだろうか。
そうなると、企業がなすべきことは1 つ。社員が仕事にやりがいを感じられるようにすることである。これは企業にとって当たり前のことではないか。ES を高めることこそ、企業の存在価値なのである。
やりがいは人によって異なるが、共通するのは人間性を尊重された時に感じると言うことができる。人は、動物やロボットのような働かされ方では、やりがいを感じることができない。意味のわからないことや納得のいかないことをやらされたり、黙って人の話を聞かされたりすると、人は苦痛を感じるものなのである。
人間性とは、笑ったり、感謝したり、感動したりと幅広いが、仕事において人間性を尊重されたと感じるのは、人に認められた時だろう。たとえば、仕事を任されて自分で考えて行動する時、自分のやったことで人に感謝された時、成果が認められて自分の成長を実感できた時などがそうだ(図表)。
やらされ仕事では人は幸せを感じられない──。私がこれを痛感したのは、1980年代に採用の仕事をしていた時だった。
面接で「何がしたいの」と聞くと、多くの学生が「企画がやりたい」と言うのである。つまり自分の頭を使いたいというわけだ。そこで私は、全社が企画室と言えるような組織にしようと考えた。上司が指図をするのではなく、全員が自分の頭で考えるような組織をめざしたのだ。これが今日の当社の礎になっている。
また、“成長実感”と“周囲からの感謝”が仕事のやりがいを生み出す重要なポイントであることも社員に気づかされた。以前、社員を対象に「どんな会社にしたいか」というアンケートを実施したところ、大勢の社員が「お客様に感謝される会社にしたい」「自分の成長が実感できる会社にしたい」などと答えた。休みや給料の多い会社にしたいという回答はほとんどなかったのである。日頃、お金に価値を置いているように見える人でも、改めて仕事において大事なものを聞くと、やりがいを挙げることが多い。良心を働かせて考えれば、行き着くところは誰もが同じなのである。他社でとったアンケート結果を見ても似たような結果だった。
とは言え、仕事でやりがいが感じられるようになるには、社員が自ら成長のサイクルを回し続ける努力が不可欠だ。そのサイクルとは、「気づく」「考える」「発言する」「自ら行動を起こす」「結果について自ら反省する」というもの。PDCA に近いかもしれない。常にこのサイクルがぐるぐる頭の中で回っている人は成長し、人に感謝される仕事ができるのである。