連載 HR Global Eyes 世界の人事 ニッポンの人事 Vol.8 派遣の扱いに見る 日本の官民の不協和音
人件費のトータル・コスト・メリットに見る日米欧の違い
年末になると、2008年の暮れに「派遣村」の話を聞いた時のことを思い出す。まだパリに赴任中で、しかもフランス人から知らされた日本のニュースだったから、正直うろたえた。その場でうまく説明できなかったのだ。
グローバル競争の過熱から、世界中の企業で業績確保のために、損益分岐点の引き下げを狙って固定費を圧縮する動きに拍車がかかった。これまで固定費扱いだった人件費も、何とか変動費化して削減し始めた。コストの柱の1 つである人件費を、自由なコントロール下に置こうというのは、資本主義の自然な論理だろう。
四半期ごとの業績が問われる米系企業では、初めから労務費は変動費扱い。十数年前に流行った“BPR”(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)以来、さまざまな仕事の「外注・請負委託」(アウトソーシングと呼べばちょっと洒落た感じになる)が、当たり前になった。“人の時間貸し”である「派遣」は、その合間をぬいながら成り立ってきたビジネスのように見える。米国では、大都市はもちろん地方でも工場が1 つでもあれば、大手人材派遣会社のブランチ(支社)が必ずある。派遣は米国企業の雇用の仕組みに不可欠な歯車なのだ。
不況時に、非正規従業員にまずシワ寄せがいくのは、洋の東西を問わず同じである。必要な時に雇用・解雇でき、経営者側にとって自由度が高いからだ。しかし、同じ状況にある日本がとりわけ「派遣切り」に集中したのはなぜなのか? ──それがフランス人たちの問いかけだった。