連載 インストラクショナルデザイナーがゆく 第 33 回 過去の失敗を糧にする姿勢と リーダーシップをドイツに学ぶ
忘年会に端を発した日独のリーダー考
世間があわただしい2009年暮れ。年末の恒例行事、ベートーベンの第九を日独の知人たちと聴きに行った。正直に言うとコンサートは前座で、その後の飲み会がメイン。今回は、その飲み会のおしゃべりに垣間見た、人材育成と人材活用に関する日独の違いを紹介しよう。
『喜びの歌』を口ずさみながら、「プローストゥ!(カンパーイ!)」と勢い良くビールグラスを合わせたのは、フランクフルトの大手企業人事担当A 氏、ポツダムのアルベルト・アインシュタイン学術パークに勤務するB女史の2 人のドイツ人。それに、我が母校慶應義塾大学のドイツ文学科の元名誉教授C 先生、DAAD(ドイツ学術交流会)の留学生で2010年からベルリンのフンボルト大学大学院で学ぶD 君、そして私の日本人3 人。
「2009年は『喜びの歌』の作詞をしたシラー生誕250年。シラーの詩をもとに『走れメロス』を書いた太宰治生誕100年、そしてベルリンの壁が崩壊して20年。記念すべき年ですなぁ、プローストゥ!」
飲み会でも講義してしまうC 先生は、やたらと乾杯したがるのが困りものだ。
「あの年、ワタシはヨーロッパにいました。そこでベルリンに行き、壁を壊しました」と、知っている限りのドイツ語でコミュニケーションをとろうとあがく私。フランスの学友たちとベルリンに飛び、露店でハンマーを買い、ドキドキしながら壁を壊した20年前の感動を伝えたいが、言葉の壁は壊せず、ただ遠い目をするしか手がない。「僕は小学生だったからあまり覚えていないけど、そんな歴史を持つベルリンで学べるのは楽しみだな」と、何気なく若さと将来性を主張するD 君。