連載 ベンチャー列伝 第13 回 SNSを使った内定者教育で 仕事への想いと、書く力を高める
洋生菓子メーカーのモンテールでは、2002年から積極的に新卒採用を行い、育成に力を入れている。
昨今では内定者教育にSNSを導入。お菓子についてSNSに書き込ませることで、同社の仕事の原点であるお菓子への想いを強め、「書く力」などのビジネス基本能力も養成している。
システムの整備から人材マネジメントへ
モンテールは、チルド(要冷蔵)デザートの分野でトップシェアを占める洋生菓子メーカーである。1954 年に「鈴木製菓」として飴製品を中心とする菓子工場からスタートし、1975 年に「モンテール」に社名変更、1991年にチルド市場に参入。シュークリームやエクレアなどの同社の多くの商品は消費者の心をとらえ、1991 年以降、売上高は堅調に推移している。
そんな同社のホームページには工夫が凝らされ、特に「スイーツ探検隊」という名のSNS(Social NetworkingService)は、消費者同士のコミュニケーションの場となっている。実はこのSNS こそ、後述する同社の内定者への基礎教育に大きく貢献しているのである。こうしたシステムを手掛けたのは、常務取締役の鈴木智也氏だ。
鈴木氏は1996年、日本の大学を卒業後、米国の大学院に進学。そこで、当時はまだ日本では今ほどまで広く普及していなかったインターネットに出会い、大きな将来性を感じてIT の知識や経験を身につけた。大学卒業後は帰国し、外資系コンサルティング会社に就職した。
そして1997年、当時、父親の故・鈴木良彦氏が経営するモンテールが、基幹となるつくば工場を竣工させ、急成長していると聞いた。その時、モンテールが第二創業期としてさらなる飛躍を遂げるには、事業の効率化や基幹部分の整備が必要だろうと感じた。そして、留学時代に得たIT の知識・経験や、コンサルタントとしてやってきたノウハウが活かせると思い、モンテールに入社することを決意した。1999年のことである。
人と拠点が増えると、当然ながらそれを管理するシステムも変えていかなくてはならない。特に同社ではアナログな管理からデジタルへの移行が必要だったが、次代に向けて積極的な対応は取れていなかった。そこで、コンピュータの西暦2000年問題が騒がれていたこともあり、鈴木氏は入社早々、基幹システムの全面リニューアルを手掛けていった。システム面の整備が一段落すると、今度は「人」の育成と管理が大きなテーマとして浮上した。そのため鈴木氏はその後、人の育成とマネジメントにも深くかかわっていくことになる。
大卒の新卒採用を開始
人材の底上げを図る
同社の人材について具体的に改革をスタートしたのは2000 年春である。当時、本社の総務や販売管理といった管理部門の人たちは、30歳代後半から上の世代。28歳の鈴木氏がその中で一番若いという状況だった。
「それまで採用活動は生産部門を中心に行っていました。しかし、会社の将来を考えれば、全部門において次代を担う人材の人数と能力を底上げしていくことが最重要課題だと認識していました」(鈴木氏、以下同)
そこで、かねてから同じ課題を感じていた実兄の鈴木徹哉氏(現社長。当時は経営企画室室長)と15年後のビジョンを打ち出し、それを実現するためにぜひ将来の幹部候補として新卒を採用したいと、当時の社長をはじめ、経営陣に提案した。この提案は受け入れられ、世間がまだ就職氷河期であった2001年、翌年4 月入社予定の新卒採用活動を全国で開始することになった。
「それまでなら、当社のような中小企業では優秀な新卒人材の確保は難しかったのですが、就職氷河期であったことや、インターネットによる効率的な採用環境が整ってきていたことが有利に働き、結果、次代を担う人材を12人も採用することができました。その後も、平均7 ~ 8 人の新卒採用を行っています」。2009年現在では、正社員の平均年齢は29.5 歳と、30歳を下回ってきたという。