Highlight ここに注目! HRD JAPAN 2010
「 今を越え、次代を切り拓く~変革をリードする人材マネジメントの実行」──
本大会では、このテーマにのっとり変革を実行していくために人事が持つべき視点を網羅した37のセッションを用意している。
その中から特に注目の見どころを、テーマ設定や事例企業選定に携わった企画委員のメッセージとともに紹介する。
今を越えて次代につなぐ複眼的視点を得る
昨今、職場のコミュニケーションの希薄化が企業内のさまざまな問題を引き起こしているが、加えて、2008年の世界的大不況の影響で停滞ムードが増した組織の立て直しは急務である。こうした目先の課題解決の一方、持続的に成長する企業となっていくために、国籍・価値観・性別など、多様な人材が能力を発揮できる組織の仕組みや風土づくりに、長期にわたって取り組む必要もある。特に国内市場の飽和や、国内労働人口の減少などを背景としたグローバリゼーションの加速の中で、5 ~10年先を見据え、ビジネスのグローバル化を支える組織や人づくりは今や“待ったなし”の状態だ。
こうした短期・中長期視点の両立だけではなく、多様性の活用の一方でグローバルプラットフォーム構築等の標準化が求められていることを見ても、まさに「複眼的視点」での組織・人材マネジメントがまさに、「今を越え、次代を切り拓く」キーになるのではないだろうか。HRD JAPAN 2010は、この複眼的視点を得ていただくためのヒントやきっかけを提供するものである(プログラム概要は6ページ参照)。
●オープニングセッション
2 月2 日午前のオープニングセッションには、グローバル競争の中で、日本企業がどうあるべきかを示唆するメッセージが込められている。基調講演には、武田薬品工業 代表取締役社長 長谷川閑史氏を迎える。「グローバル時代を勝ち抜く経営戦略と人材マネジメント」というテーマのもと、経営の基本理念である“タケダイズム”の実践をベースに環境変化に柔軟に対応しながらグローバルビジネスを展開するタケダの取り組みを紹介する。加えて長谷川氏が経済同友会においてまとめた「新日本流経営」と、それを実践するリーダーについての提言についても言及する。米国でのビジネス経験に基づく持論を交えて、グローバルに通用する日本のリーダー教育への強い思いが語られる講演となるだろう。
オープニングセッション後半の特別講演には、多摩大学大学院教授でシンクタンク・ソフィアバンク代表の田坂広志氏が登壇する。現在の世界的経済危機を引き起こしたグローバル資本主義は、これからいかなる資本主義へと進化していくのか。その問いに対して、田坂氏は、「弁証法」が語る世界の発展法則に基づき、“経済原理の5 つのパラダイム転換が起こる”と予見する。そしてその結果、資本主義は、貨幣という「目に見える資本」だけでなく、知識や智恵、関係や信頼、評判や文化といった「目に見えない資本」を重視する成熟した資本主義へと進化していくと言う。田坂氏が語る「目に見えない資本主義」のビジョンは、21世紀の企業進化と日本型経営の意味を考える斬新な視点を提供するだろう。
人と組織のマネジメントを包括的にとらえる
2 月2 日午後からは個別テーマに分かれたセッションが始まる。本稿冒頭にて述べた、HRD JAPAN 2010が提示する「グローバルビジネスに対応する組織・人材マネジメント」が複数のセッションでテーマとして取り上げられている。過去のHRD JAPANで扱ってきた「グローバル人材の育成」というテーマに加え、組織運営の点でのグローバル対応にも着目しているのが本大会の特徴である。A─7 セッション「人事のグローバルプラットフォーム」では、グローバル共通の人事評価制度・人材育成の考え方や具体的仕組みについて、日本エリクソンおよびHSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッドの2 社の事例紹介がある。ここでは事例を聞くだけではなく、日本企業がグローバルプラットフォームを構築できないのはなぜか、あるいはどこまでグローバルで共通の仕組みを持つ必要があるのかを、参加者全員で考えてみたい。また、D─4「人事の業務標準化と役割再考」でも、人事オペレーションの大部分がグローバル共通で進められているヒューレット・パッカードの事例が紹介される。コスト競争を念頭に人事オペレーションの集約が必至な状況下で、定型業務を手放した人事部が経営のパートナーとしてどのような戦略的役割を担うのか──これは、人事部に突きつけられたグローバル課題と言えるだろう。
●企業全体の研究セッション
今回のHRD JAPANの2 つめの特徴は、個別テーマだけではなく、登壇企業の組織・人材マネジメント全体が把握できるセッションも多数用意している点である。前回大会までは、主に個別テーマを掲げ、それを体現する企業事例を紹介するという形でプログラムが構成されていた。しかし、個別の人事施策が単体で効果を発揮するというよりは、さまざまな施策が補完し合いながら人材の成長や組織の活性化に寄与し、その結果、企業戦略を実現させているということが多いという理由から、このような形にした。