連載 現場教育の落とし穴 Vol.3 プロセス指導の落とし穴 仮説なき指導が現場を苦しめる
最近、考えさせられることがある。それは現場指導のあり方だ。
若い頃はコンサルタントとして企業現場を指導する機会がよくあったが、その頃は、改善につながるプロセスを指導するだけで良いと思っていた。データ分析の仕方、結論の出し方、作業改善の仕方、問題発見の視点など、具体的なプロセスを現場の人が1 人で実行できるように指導すれば良いと考えていたのだ。しかし現実には、目標を伴わないプロセス指導は現場の成長につながらない。当時は、コンサルタントは部外者であり、製品や技術の専門家ではないという言い訳があった。
最近、消費財メーカーの営業所長が同じ誤解をしている場面に出くわした。“売り”をつくることと利益確保のどちらを優先すべきかという大方針や、問題解決に対する仮説すらないまま、部下である営業マンを指導していたのである。
たとえば、在庫対策の指導をする時、人材育成の観点からチームメンバー個々人に“問いかけ”を行い、自ら問題を解決に導けるように促す。しかしこの営業所長は、現状調査やデータ分析の方法は指導しても、どの製品の在庫を増やし、どの在庫を徹底的に削減すべきかといった「答え=仮説」を示していなかったのだ。