連載 人事担当者のための正しいメンタル不全対策 最終回 現代型うつへの対応には 人材育成の視点がカギ
前号では、“現代型うつ病”が急増している原因として、幼少期の他者との協働不足や、ゆとりや個性を特に尊重する時代背景が考えられることを説明しました。 この時代背景が劇的に変化しない限り、企業にとって今後ますます現代型うつ病が大きな問題となっていくことが予想されます。そこで、現代型うつ病への正しい人事労務管理を取り上げ、この連載を締めくくりたいと思います。
毅然たる態度で組織のルールを教える
従来のうつ病の治療の原則である「休養」と「服薬」だけでは、現代型うつ病は回復・改善しません。もちろん、これらの治療法に効果がまったくないわけではありません。現代型うつ病でも、眠れない時には睡眠薬、気分が塞ぎ込んでいる時には抗うつ薬の服用は有効です。また、ある一定期間療養して、心身のエネルギーを回復させることも重要です。ただ、そうして病状が良くなったと思って職場に戻っても、未熟な人格が改善していなければ、再び職場不適応を起こし、メンタル不全に至ります。現代型うつ病には、従来型うつ病とは別のアプローチをとる必要があるのです。
別のアプローチとは、“未熟な人格の成熟を促す”ということ。たとえば、現代型うつ病にかかっている人は職場復帰の際、よく「自分はあの部署の仕事が合わずにうつになったのだから、職場を異動させて欲しい」といった要求をしてくることがあります。まず、この場合のふさわしい対応から考えてみましょう。
こうした彼・彼女らのワガママとも思える主張には、思わず「いい加減にしろ! ふざけるな!!」と怒鳴りたくなるものですが、感情的になってはいけません。声を荒らげてしまえば、後々「うつの私に怒鳴った人事労務担当者」と、パワハラや労災などで訴えてくるという事態になりかねないからです。かといって、一方的に身勝手な要求に応じることも避けなければいけません。言いなりになればその場は丸く収まるかもしれませんが、現代型うつ病の人に「ダダをこねれば周りが思い通りに動いてくれる」という誤った学習をさせてしまうことになり、未熟な人格をさらに未熟なものへと退行させてしまいます。