連載 調査データファイル 第97回 やむをえず派遣として働く人が急増 派遣労働者対策の根幹は 正社員への道づくり
派遣労働者のうち、半分近くが、正社員になれず、やむをえず派遣として働いているという現状がある。
ところが、このたびの不況で、その多くが「派遣切り」に遭い、元派遣労働者の失業問題が深刻化している。
この問題に対処すべく、政府は、前政権の方針を180度転換し、派遣労働の再規制に踏み切る方針を明らかにしている。
しかし、それでは単に働き場所を奪うだけという声も大きい。
この問題の解決の糸口は、教育訓練システムの整備にある。
1.規制緩和から規制強化への政策転換
労働者派遣に関する法規制を巡って迷走が続いている。民主党政権下で新たに打ち出された労働者派遣法の見直しが、登録型派遣を禁止するという厳しい内容となったからだ。
先の小泉政権は、盤石な政権基盤の下に規制緩和を推し進め、労働者派遣法が改正された。とりわけ、正社員中心の労働組合が最も重要な組織基盤としている製造現場に対しても、連合が猛反対したにもかかわらず派遣解禁を実施。だが、2008年9 月に勃発したリーマン・ショック以降の深刻な不況下で、派遣労働者の大量失業とホームレス化が顕在化し、非正社員全体に対するセーフティーネットの未整備と相まって、労働者派遣システムそのものに対する批判が強まったのである。
政権交代を契機として、現在準備されている労働者派遣法見直しの主な内容は、以下の通りである。
(1)登録型派遣の原則禁止:①専門26業務、②産前産後・育児・介護休業取得者の代替要員派遣、③高齢者派遣、④紹介予定派遣は例外とする。
(2)製造業派遣の原則禁止:雇用期間が1 年超の常用雇用の労働者派遣は例外とする。
(3)日雇派遣の原則禁止:契約期間が2 カ月以内の派遣労働を原則禁止。
(4)マージン率の情報公開:派遣元は派遣労働者に対して派遣料金額を明示しなければならない。
(5)暫定措置:3 ~ 5 年の猶予期間を設ける。
登録型の派遣に厳しい制限を設けるというのが今回の法改正の主眼となっている。こうした姿勢の背景には、このたびの深刻な不況下で派遣労働者が雇用の調節弁として使われ、短期間で大量に失業したことに加え、失業した派遣労働者の一部がホームレス化したことがある。