論壇 インストラクションスキルの 国際標準体系導入が必要な理由 ~良質なインストラクターを輩出するシステム構築のために~
研修への期待が「福利厚生」から「ビジネスパフォーマンス向上」へと変化している中で、研修内容やコンサルティングアプローチは変化している。
しかし、インストラクターに必要な能力は旧態依然のまま取り残されている感がある。
人材開発業界の国際的な標準化(ISO)の流れの中で、今インストラクターに必要な能力を探る。
インストラクター輩出システムの実態
「医師免許は持っていませんが、趣味で外科医をやっています」という人もいなければ、「司法試験には合格していませんが、自分には向いていると思うので弁護士をやっています」という人もいない(もしそのような人がいても必ず法律で罰せられるが)。しかし、目立った参入障壁もなく、それでいてプロフェッショナル“らしい”肩書きを自由に名乗れる仕事が、世の中にはいくつか存在する。その中の1 つが今回のテーマである「インストラクター」である。
これは当然のことであるが、外部人材開発会社(以降HRD ベンダー)の研究開発・マーケティング・セールス・コンサルティングのすべてが、顧客である人事・人材開発部門に最高の品質で研修を提供できたとしても、最終工程のインストラクターが同じく最高の品質で研修を提供できなければ、それ以前の活動はまったく意味をなさない。研修が失敗に終わることが単に「インストラクター自身の後悔」程度の問題で終わればよい。しかしB to B における人材開発ビジネスの現実では、研修の失敗によって迷惑を被るステークホルダー(研修の利害関係者)は山ほどいるのだ。たとえば次の通りである。
●参加者:せっかく忙しい時間を割いて参加しているのに、この研修と自分の仕事はまったく関係ないじゃないか!
●参加者の上司:メンバーを2 日間も業務から切り離すことが、うちのチームの目標達成にどれだけマイナスか。そのうえ研修内容が役に立たないんじゃ話にならないよ!
●発注者(人材開発担当者):事前の打ち合わせで、この研修の実施背景や、参加者の状況をすべて伝えたのに、何も活かされていない。参加者も盛り上がっていないし、これまでの打ち合わせに費やした時間は何だったんだ!
●発注者(人材開発担当者)の上司:(担当者は)ちゃんと要求事項を伝えているのか?
伝えていたとしてこの研修内容じゃあ、上になんて報告すればいいんだ。少ない予算を使ってやっているのに!
●発注企業の経営者:やっぱり研修なんて意味がない。予算を減らそう。
● HRD ベンダーの営業担当者:もう終わりだ。悪い夢だと思って忘れよう。それが精神衛生上、正しい。