TOPIC② 「日本の企業におけるダイバーシティ ~女性が働くということ~」レポート 企業での女性活躍推進のための 女性社員による2つのアプローチ
加速度的に社会が変容する今日、人々の生活環境は多様化し、個々の働き方にも大きな影響を与えている。
こうした現況を踏まえた施策が今、企業には求められている。
企業内の多様性を促進させ、競争力向上を実現するために有効なアイデアはどこに隠れているのか。
実際に働き方の変容に直面し、それに向き合ってきた企業の社員を集めて行われたセミナーを取材した。
“ダイバーシティ”をキーワードに、社員1 人ひとりの個性を活かしながら、その能力を最大限に引き出すマネジメントや組織づくりが注目される中、2009年12月22日、ダイバーシティの中でもとりわけ“女性”にフォーカスしたセミナー、チェンジマネジメント研究会「日本の企業におけるダイバーシティ~シリーズ①女性が働くということ~」が、JMAM 人材教育とイコアインキュベーションの共催で東京ウィメンズプラザにて開かれた。2人のゲストスピーカーは、いずれも現場で働く女性社員。現場での視点に基づく講演は、多くの共感と新たな発見をもたらしてくれた。
企業事例1
ワークとライフの融合で楽しく働き続ける
新日鉄エンジニアリング マネジメントサポート
センター総務部総務室 マネジャー
折笠光子氏
新日鉄エンジニアリングは、2006年に新日本製鐵のエンジニアリング部門が分社独立して設立された新会社だ。主な事業内容は製鉄プラント、環境ソリューション、海洋・エネルギー、建築・鋼構造で、女性社員は全社員約1200名の1 割に当たる120名。うち管理職は7 名である。「この数字からもわかる通り、弊社は女性活用においては、まだ発展途上です。ただ、社内に特別な制度や仕組みがなくても、工夫次第で長く働き続けられる、ということを自ら立証している女性の1 人として、本日は体験談をお話ししたいと思います」(折笠氏、以下同)
折笠氏が新日本製鐵へ入社したのは、男女雇用機会均等法が施行されて4 年目の1989年。最初の配属は、八幡製鉄所の遊休地を利用したテーマパークの立ち上げプロジェクトだった。2年間のプロジェクトの後、本社での人材開発・採用の仕事を経て、念願の海外営業部門へ。10年間にわたって、文字通りパスポートを携えてアメリカ、韓国、インドなど世界各国を飛び回る中、結婚して3 人の子どもを出産した。
3 回目の育児休暇明けが、ちょうど新日鉄エンジニアリングの発足時期に当たり、人事担当として人材開発の体系づくりに尽力。昨年春からは、CSR(企業の社会的責任)部門の立ち上げを担っている。
楽しく働き続けるために工夫してきたこと
結婚や出産で周囲の女性社員たちが辞めていく中、なぜ折笠氏は多忙な業務と育児を両立し、働き続けることができたのだろうか。
「一番のポイントは『楽しく働き続ける』を実現できたこと。嫌な思いをしながら働くのはつらいですから。でも楽しいだけでは、会社にとって“お荷物”になってしまい、長く働き続けることはできません」
この「楽しく働き続ける」を叶えた原動力は、上司・同僚、仕事、家族・周囲、自分のマネジメントにあると折笠氏は言う。
・上司・同僚
子どもが幼い間は保育園に迎えに行くため、18 時半までに退社しなければならなかった。帰宅後は夕食、洗濯、入浴、寝かしつけなどと、職場以上の慌ただしさが待っているのだが、事情を知らない男性社員たちから、しばしば“早く帰れてうらやましい”と言われることも。 そこで機会を見つけては、周囲の社員たちに家庭での生活ぶりについて話すようにし、徐々に理解してもらえるようになったと言う。
「上司には『子どもが熱を出して保育園から呼び出しがあったら、1 分でも早く迎えに行かなければ怒られてしまう』と繰り返し話しているので、私が主催する会議の進行役を急遽お願いした時も、快く引き受けてもらえました。職場の理解を得るためには、意識的な“自己開示”が欠かせません」
・仕事