特別企画 第22回 能力開発優秀企業賞 受賞企業 事例報告 日立建機 グローバルに推進する 日本のモノづくりと人づくり
日本能率協会は、優秀な能力開発活動を行った組織を表彰することにより、産業界に有効な能力開発のあり方を普及させることを目的に、1988年「能力開発優秀企業賞」を創設した。第22回となる今回は、日立建機、東京海上日動システムズ、日本ベーリンガーインゲルハイムが受賞。そこで3号にわたり、この順序でその取り組みを紹介する。日立建機は、高まるグローバル化に応じた人材育成への必要性から、2007年に人材開発を事業戦略として明示し、バラバラに行われていた教育を統一。同社が大切にしてきたモノづくりと人づくりをグローバルに展開しているとして、本賞を受賞した。
“メイド・バイ・ヒタチ”を人材育成で実現
油圧ショベルのグローバルビッグプレイヤーとして知られる日立建機。日立製作所の建設機械製作部門を分社化して1970 年に設立された。建設機械や産業機器の製造や販売、アフターサービス、レンタル事業を展開し、世界各地に拠点を持つそのグループ規模は、世界屈指のポジションにある。
以前から技術・技能系の新人教育、国際技能競技会の開催などを通し、日本のモノづくり文化を伝承してきた同社だが、2007 年には海外売上比率が全体売上高の70% を超え、いよいよグローバル人材の育成に本格的に注力する必要性に迫られた。
「中国でもインドでも、同一品質を追求し、“メイド・バイ・ヒタチ”のモノづくりを実現しなくては――。『人材開発センタ』を発足させたのは、まさしくそんな声が高まってきた時期でした」。こう振り返るのは、人材開発センタ長の中山潤一氏である。
2007 年に策定した中期経営計画「創2010 For the New Stage」。その基本方針の中で同社は、「世界中のお客様に信頼される日立建機」「業界最高水準の利益体質を実現」を謳った。また、具体的な数値目標として、売上高1 兆円以上、経常利益1000 億円以上を掲げた。
「そのための重要な事業戦略として明示したのが“人材開発”です。人材開発センタの発足はこうした戦略の一環でした」(中山氏、以下同)
それまで、技術・技能教育は土浦工場の中で現場主導、RSS(レンタル、サービス、セールス)部門への教育は営業本部で、そしてマネジメント教育は人事部でと、それぞれに行われてきた教育を人材開発センタで統括。そのほとんどを、2007年4 月に設立した霞ヶ浦総合研修所で行うことにした。そして、日立建機本社の従業員のみだった対象もグループ連結の約1 万7000名の従業員に拡大した。組織全体に横串を通し、体系化した一貫教育を行うことで、より高度なグローバル人材を育成していこうという試みである。
霞ヶ浦総合研修所は、眼前に霞ヶ浦の湖水を臨むまさに絶好のロケーションにある。1 万5000平方メートルという広大な敷地には、研修棟やグローバルテクニカルセンタ棟、実習工場が並び、豊富な研修室の他、宿泊施設も完備されている。新入社員への技能研修、幹部養成だけでなく、海外からの研修生も受け入れている。溶接のイロハから次世代リーダーの育成まで、あらゆる教育をここで行っているのである。
現場から教育ニーズを引き出す仕組み
「教育ニーズは現場にある」――この信念から、同社では国内や海外、本社、各部門やグループ会社を統括した「全社教育推進委員会」を設けている。人材開発センタと委員会の関係、そして教育の進め方は以下の通り。