新連載 部下が伸びる上司の心得 第1 回 やる気がない部下には 仕事の意味を意識させよ
部下の能力を伸ばすために、上司が取るべき姿勢やアプローチがあります。そこで必要なのは小手先の対人スキルではなく、部下の内面に入り込む覚悟などといった“心得”。この連載ではそれを「部下が伸びる上司の心得」として、コーチングのプロ6 名が、職場でよくある具体的なケースを交えながらお伝えします。第1 回目の今回は、明らかにやる気を失っている部下へのアプローチについて。私たちコーチもよくそうしたご相談を受けます。
人のモチベーションを左右する大きな要素に「目の前の仕事の“意味”を実感できること」があります。自分のしていることに意味を見出すと、人はそこにエネルギーを集中し、モチベーションを高めることができるのです。
スポーツの世界でも、厳しい練習に対するモチベーションの維持に苦労するアスリートが多く、それを維持できるかどうかが一流であることの条件と言っても過言ではないようです。イチロー選手はその秘訣を聞かれ「一球一球をより美しく打ち返したい、そして、もっと野球がうまくなりたい」、さらに「上達には決して終わりがない。それが楽しい。だから野球をしている」と語ったと言います。
一球一球を丁寧に打ち返すことで、野球がうまくなる。そうして上達することで野球がさらに楽しくなっていく――。イチロー選手は一球一球と激しい練習に、このように自分なりの“意味”を与えています。初めからそこに意味があったわけではなく、彼自身が意味を“創った”のです。
このような「意味づけ力」を高められるかどうか。私はここに、部下のモチベーションを上げる上司の心得が潜んでいると考えます。では、どうすれば上司は、部下の意味づけ力を高められるのでしょうか?
ここで上司が意識したいポイントは3 つあります。
1 . 業務を「学習」ととらえさせる
2 . 業務に「物語」を与える
3 .「承認」を与える
この3 つが揃えば、部下は自分の業務に対し強い“意味”を感じます。逆に、1 つでも欠けるとモチベーションを下げてしまうでしょう。