連載 HR Global Eyes 世界の人事 ニッポンの人事 Vol.11 熱き人事部が取り組む 仏企業のKAIZEN研修プログラム
手づくり実地研修で社内教育の再活性化を
私の所属するJMAC(日本能率協会コンサルティング)では、何よりも実施支援に重きを置く伝統がある。ある意味で泥臭く、海外でも「Implementation(実施)のないチェンジマネジメントなんて、ただの絵に描いた餅だ」と力説している。だから、クライアント先でプロジェクトを進める中で企業内研修をする時も、狙いはあくまで成果につながる“実施”のためで、座学で終わることはまずない。
私がお付き合いしてきた欧米企業でも、責任者のレベルごとの層別教育は、どこも熱心にやっている。フランスなど、人件費の2%を教育研修に費やすことが義務づけられているので、文字通り必須である。そして、義務を果たした証拠として重要となるのが「領収証」だ。社内講師を活用しても、OJT にいくら力を入れても、経理的には固定費のままで、税務上は申告対象ではない。だから、社外の教育専門ファームにお願いすることになる。それもオーダーメイドの社内教育よりも、よりどりみどりのプログラムを用意した社外セミナーに送り込むほうが、手っ取り早く領収証が手に入る。
しかし嬉しいことに、こうした安易に堕するのを拒む良心的な人事マネジャーたちが欧州にもいる。共通するのは、誰もが“熱い”こと。外部教育のカタログでは飽き足らず、「自ら手がけたい」という想いが伝わってくる。普通なら手続きだけ済ませて丸投げしがちなのに、“熱い”教育担当者は、オーダーメイドの内容にこだわって、一緒に手づくりの研修内容を考えてくれるのだ。
私もそんなフランス人マネジャーと協働する幸運に恵まれたことがある。それは、C 社・M 社・Y 社などで、半数が日系企業であった。教育に対する熱い想いは、現地日本人経営者の薫陶の賜物に違いない。たゆみない改善を実施しようとする日本の製造業は、“三現主義”(現場・現物・現実)を日常の中で徹底する。そして、教育も然り。