連載 ベンチャー列伝 第16 回 努力の方法と方向を明示して 組織と人材の成長を速める
セミナー情報提供サイトを運営するラーニングエッジは、同社の人材の基本理念として8 つの「マインドセット」を置くと同時に、長期的なキャリアパスとなる「人材ピラミッド」を構築。基盤となる価値観と、「こうすれば成長できる」という道筋を明示することで、個人のモチベーションを刺激し、成長を速めている。
セミナー主催者と参加者双方の思いを実現
2003年の設立以来、増収を続けているラーニングエッジは、「セミナーズ」というポータルサイトを通し、社会人向けセミナー情報の提供と、セミナーの開催を中心とする事業を行っている。この事業展開には、創業者であり代表取締役社長CEO の清水康一朗氏の経験が大きくかかわっている。
清水氏は前職で顧客戦略やe ビジネスのコンサルタントとして活躍していたが、顧客は主に企業のマネジメント層。社会人経験が浅かった当時、そうした人たちを相手にビジネスをするには人一倍勉強が必要だと感じていた。
「そこで、自己投資でいくつかのセミナーに参加したのですが、どこでどのようなセミナーが行われているのか、当時(2000年頃)はまだ整理された情報を得るのが大変でした。一方、主催者に話を聞くと、“良いセミナーを開催しても人がなかなか集まらない”と言う。そこで、参加者側の“良いセミナーを見つけたい”というニーズと、主催者側の集客についての悩み──この2 つをうまく結び付けられないかと考え始めました」(清水氏、以下同)
実は清水氏は、会社を経営していた親戚の影響で、将来は自分の会社を持つことを学生時代から考えていた。そこで選んだのが、この構想を具体化して、セミナーの需要と供給のマッチングをインターネットを使って行う、現在のラーニングエッジの事業だった。
“一緒に働きたい人”を分析し採用基準と行動指針に
清水氏は同社創業時から、どういった人材と一緒に事業を行っていきたいかを明確に、8 つの「マインドセット」として提示している(図表1)。
というのも清水氏は、主にコンサルタントとして多くの企業を訪問した経験から、組織の大小に関係なく、どんな会社でも優秀な人とそうでない人がいること、また、一緒に働きたい人とそうでない人がいることを感じていたからだ。そして、優秀でかつ、自分が一緒に働きたいと思う人とはいったいどんな人なのかを常に考えていた。マインドセットは起業にあたって、その特徴を書き出し、共通項をまとめたものだ。起業する際には、これに当てはまる人しか採用しないと決めていたという。また、採用された社員には、常にこの8 つの項目を意識して行動し、成長していくことが求められている。
次に、社員の長期的なキャリアパスとして、3 つの階層、5 つのポジションで構成される「人材ピラミッド」も定めた(図表2)。これは、同社に入社したらどういうステップで上をめざしていけるのか、各々の段階で期待する職能を明確に示したものだ。新入社員はまずアソシエートとして入社すると、「Staff」として、個人として有能で、さらに、組織に貢献できるチームメンバーとなるようキャリアを積んでいく。次には「Management」としてマネージャー(課長)、ジェネラルマネージャー(部長)など、有能なマネージャー、結果の出せるダイレクターとしてのポジションがある。そして、その上には、理念と人徳の「Executive」(経営陣)へとつながっていく。
「人材ピラミッドをつくるにあたっては、J・C・コリンズらが著した『ビジョナリーカンパニー』の考え方をベースに置きました。人と組織の関係にギャップがある企業が多い中、そのギャップなく成長していける企業にしたかったからです」