企業事例 富士ゼロックス シニアに社外も含めた 多様な活躍の場を提供
2012 年で50 周年を迎える富士ゼロックス。
同社ではベテラン社員の定年後のキャリア選択を、明確な形で早いうちから考えるきっかけを与え、さらに社外での活躍も含めた多様な選択肢を用意して支えている。
その根底には、長年貢献してくれる社員1 人ひとりに、会社人としてだけではなく、社会や家庭でも役割を持つ人間であって欲しいという同社の、人間への広い視野がある。
富士ゼロックスでは、2001年にすでに定年再雇用制度を導入。その後も50歳代社員に、それぞれのライフプランに合わせて多様な選択肢を提供する「New Work 支援プログラム」(2003年導入)と、定年後の選択をコース化した「セカンドライフ・プログラム」(2006年導入)をスタートした。社員の高齢化に伴い、セカンドキャリア開発のニーズが高まることをいち早く見抜いていた先進事例と言える。人事部人事グループ、キャリアフロンティアセンター長の笹本宏和氏は語る。「いずれのプログラムも、対象は団塊世代にあたる50歳代社員です。この世代は他の世代に比べて人数が多く、彼らの定年後に向けた早急な取り組みが必要とされていました」
大前提として、会社と社員によるWin-Win の関係をめざした。会社はベテラン社員に、定年後もその知識や経験を活かし、能力を発揮してもらう。それが彼ら自身にとっても自己実現の手段となる。従来の雇用関係がなくなった後も、社員と会社が緩やかな関係を築ける制度を作ろうとしたのだ。
そこで導入前に、50歳代社員を対象とした「将来の人生設計に関する意識調査」を実施。結果、定年まで勤めたいという人が75.1%、キャリア開発支援サービスの利用を希望する人54.8%、独立、自営、起業、転職を希望する人19.1%という結果(複数回答)を得た。また、制度や仕組みに関する社員の要望として、公募制度や転籍制度、教育機会の提供、セカンドライフ準備制度、定年延長制度などが挙げられた。独立やのれん分けの支援として、仕事の斡旋やオフィス、インフラの提供支援を希望する声もあったという。
これらの要望を基に立ち上げたのが、「New Work 支援プログラム」だった(図表)。ユニークな制度が集まっているが、その一部を紹介しよう。
●ダブルジョブ・プログラム
筆頭株とも言えるのが「ダブルジョブ・プログラム」。現職を離れることなく、一定期間、別の仕事にチャレンジできるという制度だ。社内で二足のわらじをはく、という斬新なものである。「自分の専門性を活かせる仕事、関心のある仕事などに就くことができ、将来独立したい人にとってはその足がかりとなります。ただし応募制で、業務時間は全体の30%程度まで。評価への反映度も30%までと決められています。人気なのは社員を支援するキャリア相談員です(コラム参照)。現在、兼任者は20数名おり、競争倍率は4 倍ほどと高い。キャリアカウンセラーの資格を取得済みの人など、すでにスキルを身に付けた社員が担当しています。
中小企業を中心に環境経営評価・支援を行う部門『エコステージ推進室』で働く人も多いですね」(笹本氏)。
●シニア・テーマ休職制度