企業事例 日本マクドナルド シニアが活躍できる組織は 人を能力と成果で公正に評価する
日本マクドナルドでは2006 年に定年制を廃止した。これはとりあえずの雇用延長ではなく、2004 年の能力主義的賃金制度とセットで行われ、ベテランを含めた全社員に、能力を最大限に発揮してもらうための策である。そもそも、店舗では年齢制限はなく、高齢の従業員が生き生きと接客する同社。年齢に関係なく、能力と意欲があれば人は生き生きと働き続けるべきという土壌は、現場第一線の店舗にあった。
定年制廃止は能力主義の健全な形
日本マクドナルドでは、2006 年4月に定年制を廃止。その目的は、働き続けたいという意志のある社員が年齢に関係なく、その能力を活かせる環境を整えることである。 “働き続けたい人”の中にはもちろん、定年が近いベテラン社員も含まれており、シニアが生き生き働ける環境を整えている。コーポレートリレーション本部コミュニケーション部部長の蟹谷賢次氏は次のように話す。「我々はそもそも、年齢や性別と、個人の能力はまったく関係ないと考えています。ですから60 歳という“年齢”で、一律に退職となるのはおかしい。能力を活かせる場があるのに職を失うことは、その人自身にとっても、会社にとっても大きな損失です」
ただし蟹谷氏は「シニア活用」という言い方には違和感を覚えると言う。
「定年制廃止はシニアを活用しようと行ったわけではなく、能力主義を健全な形で運用してきた結果なのです」(蟹谷氏、以下同)
同社では定年制廃止に先立ち、2004年に賃金制度の改定を行った。それまでは年功序列型の賃金制度であったが、シニアを含めた社員に能力を最大限発揮してもらうためには、年功序列ではなく能力主義がふさわしいと、能力主義的賃金制度に切り換えた。職能・職種に対して給与を設定し、個人の目標達成度や会社全体の業績をベースに評価していくのである。
「個人の成果を公正に評価することをめざしました。この制度改定で重要だったのは『平等』ではなく、『公正さ』。それが社員の納得性を確保するうえで、最も重要な要素だからです」
この賃金制度の改定によって、同じ年齢や職種であっても、給与に差が出ることになった。しかしそれは当然のことだと社員には受け止められているという。
「成果に対するインセンティブを強くすることで、純粋に会社に対する貢献度によって評価できる制度となりました。年齢に関係なく、優秀な成果を出した人は高く評価され、それに見合った給与をもらえます」
当然、前年よりも評価が下がり、給与が下がる社員もいる。
「今年評価が低くても、また頑張れば評価が上がることがわかっていれば、一定の納得性は得られます。大切なのは、『評価は固定したものではない』というメッセージを出し、それを実行することです」