My Opinion② 一企業の枠を越えて シニアの力を活用する
日本は、世界で最も早く超高齢化社会を迎えている。シニア世代の活用に関する企業の混乱は、今後10 年は続くだろう。 シニア世代の広い知見や経験の蓄積を、組織に還元してもらうためには、個々の強みや、シニアと良好な関係をつくるためのコミュニケーション方法を押さえておくのが有効である。
そして、企業だけではなく行政とも協力して、 シニアの力を活用できるような仕組みをつくることが今、求められている。
誰も経験したことのない高齢化社会に向けて
2004 年に成立した改正高年齢者雇用安定法は、2006 年4 月(62 歳まで)から2013 年4 月(65 歳まで)にわたって、高年齢者雇用確保措置の実施義務化の対象年齢を段階的に引き上げていくことを事業主に課している。現在はその移行期間の真っ只中にあるわけだが、さまざまな企業の実情を見聞きするに、まだまだ多くの企業が、対応に戸惑っているように感じられる。
改正高年齢者雇用安定法では、事業主に①定年の引き上げ、②継続雇用制度の導入、③定年制の廃止という3 つの選択肢が与えられているが、どの方策が自社に合っているのか、シニア世代の処遇はどうあるべきかなど、まだまだ手探り状態だと言える。何しろ、日本企業が初めて取り組むことばかりであり、ある程度の混乱が今後10 年間は続くだろう。
日本社会は、世界に先駆けて急速に高齢化が進んでいる。一般に、65 歳以上の人口割合が7% を超えると「高齢化社会」、14% を超えると「高齢社会」と言われる。そして、7% から14% に上昇するまでの年数を、専門家は「倍化年数」と呼んでいる。欧州の倍化年数が約100 年、アメリカが71 年だったのに対し、日本ははるかに短く24年(1970 ~ 1994 年)であった。ちなみに今後高齢化社会を迎えるであろう韓国は18 年、一人っ子政策を採っている中国では、さらに短くなると予想されている。
日本における65 歳以上の割合は、2013 年には全人口の25%、2030 年には30% を超えると言われるが、世界で最も早く「超・高齢社会」を迎える日本で危惧される問題の1 つに、労働人口の減少がある。その有力な解決策となり得るのが、シニアと女性の積極活用、特にシニア世代であろう。各企業には、単に法律改正を後追いするような消極的な姿勢ではなく、よりシニアが生き生きと働き、その力を存分に発揮できるような対応を積極的に打っていくことが求められている。
そのためには、シニアについてよく知る必要がある。シニア層の人口が増加するにつれ、最近ではシニアマーケットが注目されるようになってきた。シニアが求めるものは何かを知り、シニアの考えていることを商品に反映させていくことが、シニアの方々が持っている知識や経験を世の中に還元することにつながるのだ(図表1)。
弊社もそうした新しい流れの一翼を担う会社であり、シニア同士が交流を深め、意見を発信していくことのできるWeb サイトを運営している。このサイトに会員登録している50 歳以上の約30 万人の方々には、調査活動や商品開発、イベント企画などに参加してもらっているが、そこでのやり取りを通して我々はシニア世代にどのように接すればいいのかを学んできた。
実は現在、50 歳以上の方で介護を必要としている人の割合は1 割に過ぎない。多くの人は非常に元気で、経済的なゆとりもあり、豊かな経験・見識を持っている。この世代が「新しい日本」の知的生産者として力を発揮できる社会、あるいは、熟練消費者として消費マーケットを牽引していくような社会を実現し、「超・高齢社会」日本の未来を明るくしていきたいと考えている。