連載 部下が伸びる上司の心得 第4回 頭がカチカチになっている部下には 多彩な質問スキルで気づかせよ
外部環境の変化の著しい昨今、組織も人も日々変化に対応、適応していくことが求められます。しかし、実際には常識や前例を疑い、柔軟な思考や発想を持って行動するのはなかなか難しいもの。その行動を生み出す発想や、思考のトリガーとなる要素、それが「質問」です。ある調査では、人の脳の活動の約6 割は「質問」が占めるそうです。脳内で常にさまざまな質問が飛び交い、思考が促されています。朝起きてまず「トイレに行こうか? それともテレビをつけようか?」と考え、昼時には「どこのお店に行くか? 何を食べようか?」と自問自答し、夕方の会議では「発言するか? 黙っているか?」と考える……。ですから、質問のバリエーションが豊かなほど、その後の行動パターンも増えることになります。
ところが残念なことに、自分で作り出す質問のバリエーションは概してパターン化されているため、そこから発生する行動結果もさほど変わりばえがしない傾向があります。皆さんも、1人で悶々と考えるよりも、人と会話を交わすほうが新たなアイデアが浮かんだり視点が見つかる、といった経験はありませんか?
それは、他者の新しい視点や観点が質問を介して脳内に入り、新たな刺激が生まれて、普段は思いもつかない考えが出てくるからです。
今回はその「質問」がテーマです。ある販売会社で入社2 年目の新米社員A 君と上司とのやり取り(= 質問)を通して、A 君が成長を遂げる軌跡を、代表的な3 種の質問スキルとともにご紹介します。
①主体者変換型クエスチョン
営業先で曖昧な提案をして、お客さんを怒らせてしまったA 君がオフィスに戻ってきました。皆さんならどういう対応をしますか?
勢いに任せて叱り飛ばすのは簡単ですが、少し工夫してみましょう。
A 君はきっと“自分なりに”最高の提案書を作ったと思ったはずです。そう、この“自分なりに”というのがポイントです。そこで上司はこの“自分なり”という“自分軸”をいったん外して、A 君が“他人軸”で客観的に思考できるように質問を投げかけます。