TOPIC-① 企業活力研究所 人材育成研究会 調査研究・提言発表レポート 人事戦略の転換のカギは 変革力・組織力の強化
今、企業は、対外的な経営環境の変化への対応を迫られる一方で、若手人材の育成やコミュニケーション力の低下といった組織内部の問題に直面している。
このような状況下で、人事・人材開発として最も重視すべき課題は何か。
2010 年4 月22 日、企業活力研究所は「企業の次の発展に向けた人材力強化のあり方」として、企業の実態把握を目的としたインタビュー調査の結果を元に、今後企業が取るべき方向性についての提言を発表した。
グローバル競争下での組織づくりに向けて
企業活力研究所が設置した、人材育成研究会による今回の調査研究・提言の背景には、2008年のリーマンショック以来の世界的な経済不安や内需の低迷、1990年代のバブル崩壊後に日本企業が導入した、成果主義をはじめとする一連の人事施策によるマイナス面の影響など、さまざまな問題がある。
去る4 月22日に行われた「企業の次の発展に向けた人材力強化のあり方への提言」の発表にあたり、人材育成研究会委員長・富士通総研取締役
エグゼクティブ・フェローの根津利三郎氏は次のように語った。
「グローバル競争に勝ち抜くには、たとえば韓国のサムスン電子のように、海外で活躍できる人材を輩出していくことが望ましい。それには、人材育成を人事部門のみの問題とせず、経営上の重要課題として取り組む必要がある。今回の提言が、マネジメントの仕組みづくりの一助となることを願う」
インタビュー調査に見る人事の実態と課題
同研究会は本調査にあたり、製造業、エネルギー関連産業、金融業、卸売業、情報・通信業、サービス業の合計26社の人事担当者に、①当面する人事上の課題と対応策、②新たな経営戦略に対応するための人事戦略のあり方、③日本的雇用慣行(長期雇用、年功序列、新卒一括採用)についてインタビューを実施。結果を一部抜粋して紹介する。
①については、「組織のフラット化、上司(特に課長クラス)の多忙による時間的な制約や、昔と違う若者意識の中で、どう育成するかが問題となっている」(エネルギー関連産業)など、組織構造と育成の問題が多く挙がった。
②については、「新たな付加価値モデルの創出」(化学製造業)といった、グローバル化を前提とした新事業領域の開発が急務とされている。
③のうち、新卒一括採用と長期雇用については、「新卒は文化の伝承者として一番良い」(サービス業)、「長期的なスパンで教育、育成することは、人材育成の面からもプラスの面が大きい」(化学製造業)など、概ね有効性が認められ、定着・機能している。