My Opinion① ゴールデンエイジに「なにを」「どう」教えるかが 若手のその後の成長を決定づける
スポーツの世界に「ゴールデンエイジ」と呼ばれる年代があるように、ビジネスの世界にもゴールデンエイジがある。
ビジネスにおけるゴールデンエイジは入社1~2年目であり、最も成長するこの時期に、基本を徹底的に教え込むことが、若手のその後の成長を大きく左右する。
時には叱り、毅然とした態度を示しながらも、愛情を持って厳しく育てることが大切だ。
若手世代に必要な「基本」とは
さまざまな企業の研修担当者に話を聞くと、管理職や年配の社員が若手には、まずは企業文化や仕事に対する心構えなどの「基本中の基本」を身につけてもらいたいと考えている。一方で、当の若手社員は実務ですぐに使えるスキルやテクニックを知りたがる傾向にあるという。
若手社員がスキルやテクニックを重視している理由として、昨今のキャリア志向の高まりや不況の影響で「早く確実なスキルを身につけなければ自分の身が危うい」という不安や焦りが挙げられる。
ところが実際の現場では、いきなり若手社員が理想とするようなスキルや技術を教えてもらえるわけではない。当然、本人がやりたくない職種に就くこともあれば、やりたい仕事をすぐに任せてもらえないことも多い。そして最近の若手世代は、自分が興味を持てない仕事をする時に「なぜこの仕事をやらないといけないのか」という理由を聞き、納得すれば期待以上のものを仕上げることができるが、納得できなかった場合は行動すらできない、という傾向が見受けられる。
そんな若手が興味を持ちにくいが、重要なこととして、場面に適した挨拶や言葉遣い、目上の人を敬うことや、上下関係への意識など他者をリスペクトすることが挙げられる。少子化などの影響により家庭や学校で大事に育てられてきた彼・彼女らにとって、“大人”は尊敬する存在ではなく、「わからないことを教えてくれる存在」「自分をサポートしてくれる存在」になっている。これが他者をリスペクトできない要因のひとつと言えるだろう。
こうした若手社員に対して必要な教育は何か。それは月並みだが、入社1~ 2 年目の間に、ビジネスでの「基本」=「しつけ」を徹底して行うということに尽きる。
基本が身につくのはゴールデンエイジだけ
なぜ、入社1 ~ 2 年目の間に基本を徹底して教え込む必要があるのか。それは、ビジネスにおける「ゴールデンエイジ」だからである。「ゴールデンエイジ」とは、もともとスポーツ指導の世界で使われる言葉。諸説あるがスポーツの世界では、9 ~12歳がゴールデンエイジに当たり、世界で通用するようなトップレベルのプロスポーツ選手に育てるためには、この時期に適切なトレーニングをさせ、正しいフォームなどの基本動作やマナー、心構えを身につけさせる必要があるといわれている。この時期に間違った基本を身につけてしまうと、後に修正するのは非常に難しく、応用も利かなくなり伸び悩む。
ビジネスの世界にも、ここで基本を身につけさせなければ、後から矯正することは非常に難しいという時期がある。この時期を過ぎると、不可能ではないものの、時間もエネルギーもかかるため、費用対効果が得られなくなってしまうのである。残念ながら、こうしたゴールデンエイジは一生に一度しかない。しかし、幸いにしてビジネスにおけるゴールデンエイジは、入社と同時にやってくる。しかも、この入社1~2年目は、上司のコントロールが比較的利く年代。多少厳しく接してでも、この時期は基本を習得させるチャンスなのだ。