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中小企業2万4000社、後継経営者3500人以上を対象に調査
内省経験が多いほど、変革型リーダーシップの発揮度が高い
●日本政策金融公庫
香川大学大学院地域マネジメント研究科八木陽一郎准教授は、『内省経験が変革型リーダーシップに与える影響―中小企業後継経営者を対象とした実証分析を通じて―』という論文を発表した。本研究では、「内省経験」を持つ後継経営者ほど、「変革型リーダーシップ」を発揮できることと、「変革型リーダーシップ」を発揮できる後継経営者のほうが、質の高い経営をしているという仮説を立て、中小企業の後継経営者2万4000人を対象に質問紙調査を行い、3500人以上から得た回答を基に統計分析し、それぞれの仮説が正しいことを実証した。内省経験とは、自らのあり方を振り返り、自己理解や他者理解を深め、自己変革を行う経験であり、変革型リーダーシップとは、ヴィジョンを示し、他者を鼓舞するリーダーシップである。
本研究の背景には、中小企業の後継者不足がある。そもそも大企業と異なり中小企業には後継者となる人材が少ない。しかも、現在、経営者の高齢化が進展し、多くの企業で事業承継が急がれ、数少ない後継者をリーダーに育成する必要性が高まっている。
一方、リーダーシップ論をひもとくと、優れたリーダーについてのさまざまな研究があるものの、普通の個人が優れたリーダーになるための要因やプロセスについての研究は実は少ない。もともと優秀なリーダーに関する知識は、そうでない人にとって役に立ちにくい面があった。
そこで八木准教授は、すでにその有効性に関して多くの実証研究がある「変革型リーダーシップ」に着目。次に変革型リーダーシップの発揮に影響する要因として「内省経験」に着目した。内省に着目した理由は、内省が脳の基本機能の1つであり、誰でも経験可能な要因だからだ。内省と変革型リーダーシップの関係を統計的に分析した結果、内省が変革型リーダーシップに強い影響を与えることがわかった。内省という本人の努力により後天的に優れたリーダーシップを身につけられることが示唆された。なお、本研究では、「内省経験」を深める方法としてメンタリング、内観法などが役立つとしている。論文は、日本政策金融公庫論集第7号として日本政策金融公庫のホームページに公開されている。
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