連載 部下が伸びる上司の心得 第5回 すぐに答えを求める部下に 自分で考えさせる上司の心得とは
私たちコーチにご相談いただくお話で最近多いのが、こんなお悩みです。「『どうしたらいいでしょうか?』や『わかりません』ばかり言って考えない部下がいるんです」
上司は部下に、自分で考えて行動して欲しいと思っているのに、部下はすぐに答えを求めてくる。答えを教えてばかりいると部下のためにならないことはわかっているが、どうしたら部下が自分で考えるようになるかわからない、というケースです。
そこで、今回はすぐに答えを求めてくる部下への接し方を、1. 前提を共有する、2. 実際に考えさせる、3. 考えた行為をほめるの3 つのステップで考えてみたいと思います。
1. 前提を共有する
部下はなぜすぐ答えを求めてくるのでしょうか?
これには、上司・部下がそれぞれ抱いている「前提」の違いが関係している場合があります。
私たちは、同じ言葉に対して人それぞれ別の意味を“載せて”いることがあります。たとえば同じ「仕事をする」という言葉であっても、上司と部下とが別の意味にとらえていることも少なくありません。この前提がずれていると、行動を起こそうとした時に取る手段も、自ずと変わってきます。
某食品メーカーのマネジャーA 氏は、仕事を「自分で試行錯誤し、成長するための機会」と考えている方ですが、部下があまりに頻繁に答えを聞きに来るため、ある時、その部下に「仕事」をどういうものととらえているか聞いてみたそうです。するとその部下は「決して失敗してはいけないもの」と解釈していました。部下としては、「絶対にミスをしてはいけない。だから自分で考えるより上司の判断を仰いだほうが確実だ」と思い、頻繁に上司に答えを求めていたのです。
某保険会社課長B 氏の部下は「自分が初めて取り組む仕事は、必ず誰かがやり方を教えてくれるもの」と思っていました。これでは、上司がいくら自分で考えて欲しいと思っていても、すぐに答えを求めに来るわけです。
そこでまずは、前提を確認し、ズレているならば共有しましょう。「この仕事で重視して欲しいことは、『自分で考えること』なのか『失敗なく行うこと』なのか」、「この仕事はわからなかったらすぐ誰かに聞いたほうがいいのか、それともまずは自分なりの考えを出すべきなのか」――両者の間で前提を共有し、合意を形成することが重要です。