企業事例 サントリーフーズ 内定時から社会人意識を醸成し、 入社1年後の独り立ちに備える
1972 年にサントリーグループの清涼飲料・食品事業の営業マーケティングを担う企業として設立されたサントリーフーズ。同社では2010 年入社の社員を皮切りに、新入社員の教育体系を大幅に見直した。10 月の内定式後から、通信教育と合宿で社会人としての基本を重点的に教えることにしたのである。
独り立ちまで18 カ月にわたる教育を紹介する。
「人を育てる人」を育てる土台づくりから着手
サントリーホールディングスのグループ企業であるサントリーフーズ。1972 年に設立されて以来、清涼飲料水の販売を中心に事業を展開し、今やサントリーグループの売り上げの5割以上を占める食品事業を牽引する中核的存在となっている。寡占状態の市場にありながら、10 年間で販売数量を大幅に伸ばすなどの快進撃を続ける同社を裏で支えているのが、きめ細かい人材育成だ。「これまでももちろん人材育成に取り組んできましたが、特に2010 年は栗原信裕社長のトップメッセージとして“『人を育てる人』を育てる”を強く全社員に発信しています。これを具現化し、全社員に対して人を育てることの重要性を強く示したのが、2010 年入社の新入社員教育の大幅改定です」(斎藤氏、以下同)
改定の内容は、内定式が行われる10 月から3 月までの半年間を新しく内定者に対する教育期間として設け、社会人の基本を徹底的に学ぶというもの。そして入社後の1 年間は、マンツーマン体制でOJT の指導を受ける。この指導をするのが、コーチングを学んだコーチャーである。新入社員のメンター役となるコーチャーは、おおよそ入社8 ~ 12 年目ぐらいまでの中堅社員の中から選定されるのだが、この世代はちょうど、社員として仕事をバリバリこなしている。そのため、これまでコーチャーを任されることに負担を感じる社員も少なくなかったという。「人は人とかかわることで大きく成長できるものです。当事者意識を持って職場づくりにかかわって欲しい、新入社員教育を任されることが名誉なこと、喜ばしいことであるという意識を社員に持って欲しいという人事としての強い思いがありました。そのため、コーチャーをやり遂げることで自分も成長できるというゴールを設定し、さらにコーチャーの上司でもある課長クラスのコーチング研修導入から着手しました。今年の6 月までには、課長クラスのほぼ全員が受講し、新人を教える側の意識改革・統一を行いました」
その他、新入社員に手本を示す立場を対象にコーチング研修を実施。あらゆる階層にコーチングの教育を施すことで、共通言語で理解し合えるような土台をつくったという。こうしたベースがあるからこそ、抜本的な新入社員教育の見直しが成功したと言えるだろう。
目的を明確に伝え社会人の基本を教える
変革した新入社員教育の期間は、実に内定期間も含め計18 カ月に及ぶ(P37 図表)。18 カ月もの時間をかけて新人を育成する理由を、斎藤氏は次のように話す。「当社の仕事の大部分を占めるのが営業職です。入社した年の9 月には、自分の担当を持ち、1 人前の営業職として1 人でお得意様のところへ訪問しなければなりません。社会人の基本を早く身につけておけば、それだけ現場に送り込む際にもスムーズになります」
清涼飲料業界で二番手の同社が全社的な目標に掲げているのが、業界トップに1日も早く追いつき、追い越すこと。営業力の高い社員を育成することは、目標達成に不可欠な要素である。そこで、10 月から内定者に対しては、まず社会人として身につけておくべき基本能力として以下の3 つを目標としている。
1. 社会人としての基本技の習得
2. 学生から社会人へのマインドチェンジ