企業事例 キヤノンソフトウェア 内定者教育は新人教育の基盤。 文章力と対人能力を向上
システム開発やIT ソリューションを提供するキヤノンソフトウェア。
同社では内定者に、コンピュータシステムの基礎を学習させるとともに、コミュニケーション能力や文章力を高める教育を行っている。というのも、情報処理の資格を保持することだけが「社会人の基礎」とは考えていないからだ。内定者教育を新人教育の基盤づくりと位置付け、入り口からしっかりと、きめ細かく育成している。
新人教育と連携した基盤づくり
日本を代表するカメラ・精密機器メーカー、キヤノンを中核とするキヤノングループには、創業期から守られてきた「三自の精神」という行動指針がある。三自とは「自発(何事にも自ら進んで積極的に行う)」「自治(自分自身を管理する)」「自覚(自分が置かれている立場・役割・状況をよく認識する)」を指しており、この精神によって、社員1人ひとりの“やる気”や行動を最大限に尊重する風土が醸成されている。
キヤノンソフトウェア(以下、キヤノンソフト)は、グループのシステム開発を担うとともに、産業界に求められる多様なシステムを提案してきた総合ソフトウェア企業である。このキヤノンソフトでも「三自の精神」を尊重しつつ、プロフェッショナルを育成する体系的・戦略的な人材育成プログラムを通じて、社員が自身の将来像を見据えた能力開発を行えるようバックアップしている。
基本的な技術・知識、社会人が持つべき心構えやマナーなどを習得してもらうため内定者教育も行われ、その成果を基盤として、入社後の本格的な新人研修へと移行していく。現在のこの体制づくりに関して、人材開発課の担当課長、村田美恵氏は言う。「以前から新人研修時に、『入社前にやってくれていたら……』『我々からも学生に促しておけば……』と思える事柄がいくつかありました。内定者教育は行っていましたが、その意味ではあまり効果を上げられなかった部分もあったのです。そこで5 年前、それらを整理して体系立てたものが、現在の内定者教育に反映されています」
現在のソフトウェア業界は驚くべき速さで革新を続けている。そのため、内定者教育もそのスピードについていくための技術的フォローアップがメインかと思いきや、主眼はそこではないという。「実は、我々が最も気になっていたのが、社会人として当たり前にできなければならない基本だったのです。これは、私がこの仕事にかかわって以来の懸念事項で、内定者教育もそこを強化する内容となっています」(村田氏)
学習意欲を高めるためには効果的な仕掛けが必要
では、同社の定める「基本」とは何であろうか。現在、人材開発課が設定した内定者教育の主なテーマは3 つ。文章力(リテラシー)、コンピュータシステムの基礎、そしてコミュニケーション能力である。この3 テーマを習得できるよう、同社では、内定者教育を次のアプローチで進めている。
① 書籍による学習(コンピュータシステムの基礎)
② e ラーニング(表計算、ワープロソフトなどIT リテラシー)、ビジネスルール&マナー、キヤノンの歩み