My Opinion① 「一貫した採用・育成」の 視点から考える内定者教育
内定者教育を計画する際、どのような観点から内容を検討しているだろうか。
採用や入社後の教育と切り離して計画するのではなく、採用を「企業が求める人材像に合致した人材を育成するためのスタートライン」と位置付け、内定者教育も採用や入社後の育成と一体で設計すべきである。
企業・学生の両者にとって有意義な内定者教育とするための仕組みを紹介する。
採用と育成を一体で考えることの必要性
内定者教育について述べる前に、その前段の採用活動について考えてみたい。なぜなら、採用とその後の育成は一体のものとして考えるべきだからだ。このことはのちに述べるとして、あなたの会社では、次のような選考が行われてはいないだろうか?
「部長が『あの学生はすごく良さそうだ』と言っているから採用した」「面接官によって合否が異なる」
このような曖昧な選考を行っていては、入社してくる人材の能力も曖昧になってしまう。確かな能力を持った人材を採用するには、確かな根拠を持った採用設計が必要となる。
その理由は、人材の能力を構成する要素と関係している。図表1は、人材が持つどの要素が成果創出につながっているかを示した「成果創出モデル」だ。下のほうに位置する基本処理力や性格は先天的な要素で、後から変えることは難しいと考えられている。その上にある価値観・適性、興味・志向、動機・意欲は、変容するが意識してコントロールすることが難しい要素である。そして、さらに上にあるのが知識・態度、スキル・行動特性などの、他の人からも目に見えやすく、成果に直結する要素であり、これらは意識的に向上させることが可能だ。
こうした各要素の特性を踏まえて考えてみたい。性格などの後天的に変わらない要素を重視するのであれば、それらは採用時に確認する必要があり、動機などのコントロールすることが難しい要素は採用時に限らず採用後もメンテナンスすることが大切になる。そして、スキルや行動特性、知識は、採用時に確認するとともに、採用後にきちんと育成の仕組みを用意すれば、確実に向上させることができるものだということもわかる。
したがって、どの要素を採用時に確認し、どの要素を採用後に育成するかを考慮したうえで、採用・育成施策を一体のものとして設計する必要がある。
そもそも、採用とは自社が求める人材像に合致しそうな人材を選考して獲得することであり、採用後に求める人材像に近づけていくことが育成である。したがって、採用を育成のスタートラインととらえ、一貫した採用・育成施策を設計することが重要なのだ。内定者教育も、その中の一施策として位置付けるべきである。
評価基準の明確化が入社前後の育成に役立つ
採用施策と育成施策のシームレス(継ぎ目なし)な構築を具現化したものとして、当社では「採用選考スキーム」を提唱している。このスキームに挙げた要素を踏まえることによって、曖昧な選考から脱却することができる。以下、その手順を説明する。
求める人材像の明確化
最初に、求める人材像を明確にする。単なるお題目や理想ではなく、自社で活躍している人材に共通する行動特性を明らかにして言語化することが必要だ。そのように定義された人材像が、採用と育成のゴールイメージになる。