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企業の研修施設に突撃! 研修効果を高める ラーニングスペース 最終回 曙ブレーキ工業
「空間設計」は、社員の学びを促進する重要な要素のひとつである―。そう語
るのは、オフィス学を研究する東京大学大学院経済学研究科准教授の稲水伸行
氏である。特に企業が保有する研修施設には、研修効果を高め、学びを促進する
工夫があるはずだ。そこで本連載では稲水准教授が企業の研修施設をめぐり、
研修効果を高める工夫について解説する。今回は、曙ブレーキ工業のグローバ
ル研修センター「Ai-Village」を訪ねた。


グローバル研修センター「Ai-Village」
“街”の中の研修施設
「皆さんが快適に過ごせるようにという意味合いも込めて、本社一帯を『Ai-City(アイシティ)』という街に見立てています。Ai は、曙のA とinnovation、information、intelligence のi、また、羽生市が藍染で有名というところからとっています」
そう話すのは、人事グループ長兼人事部部長の前上亮子氏。アイシティには、本社オフィス「ACW」(曙クリスタルウイング)、「モノづくりセンター」「ブレーキ博物館」といったさまざまな施設がありますが、その一画にある「Ai-Village(アイヴィラージュ)」が今回紹介する同社のグローバル研修センターです。
「2010 年にボッシュ北米ブレーキ事業を資産買収したことをきっかけに、真のグローバル化を進めるための拠点として建設し、2012 年に竣工しました。曙を知らない多くのメンバーも加わる中で、弊社のモノづくりや考えを持って一緒に仕事を進めてもらうため、皆がひとつになるために利用してほしい、という思いもありました」(前上氏)
アイヴィラージュのユニークな外観は、折り紙を表しています(左ページ写真)。海外のスタッフに日本の文化を伝える工夫も、随所になされているということで楽しみです。さっそく見学していきましょう。
暖色と白黒を効果的に使用
エントランスを抜けてすぐのところには、図書室(Library)と自習室(Self-Study Area)があります。図書室の書籍は、バリエーション豊かなラインナップです(写真1)。
「社員に読んでほしいと、社長や役員から贈呈された本もあります。また、セルフスタディエリアには社員の異文化交流の一環として、例えばスコットランドの人形やウイスキーなど、海外の事業所や取引先から頂いたプレゼントも展示しています」(人事部 人財開発課 係長 グリメ タレーナ氏)
プロフィール
1929年創業。各種ブレーキ及びその構成部品・関連部品の製造・販売・研究開発を行う。自動車用のみならず、鉄道車両や産業機械、センサー類など幅広い分野でグローバルに事業を展開する。
資本金:199億円(2017年3月末現在)、連結従業員数:9457名(2017年3月末現在)

稲水伸行(いなみず・のぶゆき)氏
東京大学大学院経済学研究科 准教授1980年広島県生まれ。2003年東京大学経済学部卒業。東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員・特任助教、筑波大学ビジネスサイエンス系准教授を経て現職。経営パフォーマンスを高めるオフィスについて研究を行う。
[写真]=中山博敬、曙ブレーキ工業提供