世界で闘うリーダーになる 第4回 グローバルで闘う方法論 ~その1 グローバル対話能力を 身につける
「今、日本企業にはリーダーが足りない」――。そう話すのは、日立製作所でグローバル人財戦略を担った山口岳男氏。リーダーを増やすために、まずは人材開発の担当者一人ひとりが、自身がリーダーになる意識を持ち、努力する必要があるという。
日本企業がグローバルで戦う方法とは。また、グローバルで通用するリーダーシップはどのように身につければよいのか。本連載では、同氏がこれまでの経験で得た知見を交えて、5回にわたり解説する。
グローバル対話能力とは
日本人が、グローバルリーダーとして戦っていくためには、何が必要なのでしょうか。まずはあなた自身が、グローバルなビジネスパーソンになると決意すること。そして、6つの強化メニューをこなすことが近道だといえます(図1)。本連載では特に重要な1と2についてお伝えしますが、今回は「1グローバル対話能力を身につける」についてお話します。
私はグローバル対話能力とは「グローバルなビジネス環境で多様性のあるチームやその構成員とビジネス関係を構築し、維持し、かつ発展させることができる力。そして交渉や説得などのコミュニケーションにより相手と合意形成を図る中で、所期のビジネスゴールを達成できる英語でのマインドも含めた言語力」と考えています。
「外国語の言語力」ではなく「英語での言語力」としたのは、現在、英語がビジネスの世界でも LinguaFranca(世界共通語)としての地位を築いており、さまざまな国や人々との意思伝達の架け橋になるのは、好む好まざるに関わらず英語だからです。また、「マインドも含めた言語力」としたのは、単に言葉を操るスキルだけではなく、どう使うかというマインドが大切だと思うからです。
何が言いたいか分からない
打ち合わせや会議、交渉などグローバルなビジネス現場では、多くの問題が起きています。例えば、定例で開かれるあるプロジェクトミーティングでのこと。このプロジェクトをドライブする責任者は外国人、推進者は日本人でした。責任者は電話を通じて、予定通りに進まない理由や原因を質問してきたのですが、日本人の担当者は一言二言応答したものの、答えに窮し黙り込んでしまいました。周りの日本人も、あえて答えようとすることはなく、気まずい沈黙が続きました。結局、プロジェクトの責任者は、「後で教えてくれ」と言い残し、ミーティングは終了したのです。このようなことは珍しくありませんでした。
英語の問題は差し置いても、日本人は会議や打ち合わせの場で自分の言葉で自分の考えや意見を伝えたり、表明したりすることを躊躇しがちです。意見の対立を恐れ、率直でオープンな意見の表明を避けるため、「だから、何が言いたいんだ!」と罵声が飛ぶこともあります。
正直、自分自身がまさに主張しない日本人だったこともありました。言えば内容が空疎だと笑われるかもしれない、アホな奴だと思われるかもしれない、下手な英語でバカに見られるのではないか、などと考え、言いたいことを言う勇気がなかったのです。その裏には、不合理な信念にとらわれて、自己主張の意思と能力とスキルに欠けていたこと、論理的思考はできても論理的な主張の組み立て方が弱いこと、などがあったと思います。でも克服することは可能です。