おわりに 感性につながるのは 「経験と気づきの積み重ね」と「相手を喜ばせる気持ち」
欠かせない、感性の力
「『感性』をどう定義しているのか?」國學院大學教授の西村清和氏に取材をした際、開口一番にこう問われた。「『感受性』や『共感性』『創造性』を想定しています」と回答したら、「それならば『感受性や共感性、創造性』という特集にしたほうが、分かりやすいのではないだろうか」と言われた。
つまり「感性」とは、簡単に言い表せるものではないということだ。感受性、共感性といったことも含めて包括的な意味合いを持ち、ある意味都合よく使えてしまう言葉でもある。感性は「美学」の領域で何百年も研究されているが、いまだ解明されていないという意見もある。
その感性を今回取り上げたのは、簡単に定義できないもの、曖昧でとらえどころのないものにこそ、注目する必要があると思えるからだ。AIが登場し、人間ならではの価値が問われている時代、個々が備える感性こそが個性であり、“人間らしさ”ともいえる。変化が激しく不確実な世の中でオリジナルな価値を生み続けていくためにも、感性に目を向ける必要があるだろう。
経験を積む
では、どうすれば感性を磨くことができるのか。識者から多く上がった意見が、「経験する」ということだった。
・芸術に触れる
まず分かりやすいのが、絵画や音楽といった芸術に接することである。具体的には、美術館に行き芸術作品と対峙し、芸術家の思いに思考をめぐらせ、作品と対話するとよい、と感性情報研究所の長島知正氏(OPINION1)は話す。そうすることで、通常とは異なる思考になり、“日常からの逸脱”という経験につながるという。