CASE 1 ポーラ・オルビスホールディングス グループの人材一人ひとりの“気づき”を促す 個性を尊重し、 感受性と美意識を高める施策
『感受性のスイッチを全開にする』―このようなミッションを掲げるポーラ・オルビスホールディングス。
2017年にグループ理念を刷新し、従業員一人ひとりの個性や感性を磨きながら、顧客の感性も刺激できるような人材の開発に力を入れている。
その一環として行われる美術館やアート作品に触れるユニークな取り組み、そして従業員の意識や行動改革について話を聞いた。
●背景 理念に“感性”を掲げる理由
ポーラ・オルビスグループは、「POLA」と「ORBIS」を中心に、個性豊かな化粧品ブランドを輩出する。2029年に創業100周年を迎えることを見据え、2017年には企業理念を一新。『感受性のスイッチを全開にする』というミッションには、顧客だけでなく社員の感性も刺激したいという思いが込められている。
「異なるコンセプト、訴求性を持つ多彩なブランドを扱う我々のグループでは、お客様の価値観やライフスタイルも大変幅広くなっています。そこに応えるべく各ブランドの個性を磨くためには、ブランドを創る社員一人ひとりも、自分なりの見方や感受性を大切にし、個性を発揮することが必要になります。また、企業としてプロダクトやサービスだけでなく、さまざまな体験や驚きなどお客様の感情や、時には生き方をも変えるほどの刺激を与えたい。ですから、お客様に影響を与えられるような感性を持つ人材をより一層増やしたいと考えています」(人事企画室課長 山本史織氏、以下同)
他者の心を動かす存在であるためにも、社員一人ひとりの感性を大切にしたいという方針なのである。
新理念には、『感受性のスイッチを全開にする』というミッションの他、行動指針となるウェイにも『美意識』や『感受性』『個性』という言葉が並ぶ(図)。
「忙しい毎日を過ごす現代では、どうしても感受性が閉ざされてしまいがちですが、『感受性のスイッチ』は、本来、誰しも持っているもの。ですからスイッチはオン・オフではなく、常にオープンにしよう、という意味で『全開』という言葉を使っています。また、美意識については、弊社では外見的な美を磨くということではなく、他者に依存せず、自分の価値観や信条、その人らしさを発揮できる力だと定義しています。個人の魅力を最大限に活かして、他者をも動かしていく力のことです」
「感受性」や「美意識」は、理念の刷新により、突然、重要視されるようになったというわけではない。もともと同社には、こうしたことを大切にする風土があったのだという。
「弊社はグループ体制になる前から、役職など階層にとらわれず人に対してオープンな風土があり、採用においても個人に興味を持ち、個人の考えや感じ方を大切にしてきた会社です。私自身も、そこに惹かれて入社しました。個人の魅力を発揮してほしいという企業風土はずっと根底にありますが、今回あらためて言語化することで、多様な人材、ブランドが増えたグループにおいて、一体感が生まれると考えています」
グループ従業員意識調査によると新理念に対する社員の理解や共感度は大変高い。導入後まだ日が浅いのに理念への理解が深いのは、本来の企業風土と人材のマッチングが確かだという証拠にもなっているだろう。