人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第64回 「ブラッド・ダイヤモンド」川西玲子氏 時事・映画評論家
「ブラッド・ダイヤモンド」
2006年 アメリカ 監督:エドワード・ズウィック
2017年を振り返れば、中国の国力が、政治的にも経済的にもアメリカに迫っていることが明らかになった年だった。だが、その中国にも不得手な分野がある。その1つが娯楽の創出である。
アメリカが第二次大戦以後の世界をリードしてきたのは、政治力経済力に加えて娯楽を生み出す力を持っていたからだ。例えば、この『ブラッド・ダイヤモンド』のような映画は、アメリカでなければつくれない。
アフリカの混乱と、違法ダイヤの取引という深刻な問題を背景に、暗躍するブローカーや取引の実態解明に取り組むジャーナリストの姿を描く。それに国連の支援活動を遠景に入れて、重層的で見応えのある物語に仕上げている。
脚本の力、良くも悪くも世界と深く関わってきた経験の蓄積、こうした大作をつくれる資金力や世界で公開する販売網など、半世紀かけてアメリカが培ってきた娯楽創造の力には、一朝一夕では追いつかない。アフリカの現実を描いた物語でありながら、アメリカについてもいろいろと考えさせる映画である。