働き方改革1 ワクワクがパフォーマンスを最大化する 働き方改革とは 「生き方を決める」こと
消費財メーカー大手のユニリーバ・ジャパンでは、2016 年7月より、
新しい人事制度「WAA(ワー)(Work from Anywhere and Anytime)」を導入した。
働く時間と場所を自由に選べるこの制度に、各方面から注目が集まる。
WAAの仕掛け人である島田由香氏は、どのような思いと考えで「働き方改革」に臨んでいるのだろうか。
―ユニリーバ・ジャパンでは、2016年より「WAA(Work from Anywhereand Anytime)」という制度を導入されました。事前申請すれば、理由を問わず、働く場所と時間を社員が自由に決められるという画期的なものです(図1)。背景にはどんな課題意識をお持ちでしたか。
島田由香氏(以下島田)
実は、課題解決を目的にしていないんです。働き方改革に関しては、「労働時間・残業代を減らす」ことが本質ではないと考えています。WAAも「もっと社員に豊かに生きてほしい」という願いから生まれたものです。
ですからWAA導入と同時に「新しい働き方のビジョン」を発表しました。「よりいきいきと働き、健康で、それぞれのライフスタイルを継続して楽しみ、豊かな人生を送る」というものです。制度とそれを活用するマインドセットを自転車の両輪になぞらえたマークもつくりました(図2)。成長という目的地へ、ルートやペースを自分で選びながら、自分の力で心地よく進んでいくイメージを伝えています。
―WAAの基盤にある考え方は、残業(代)抑制などとは全く異なる、ということですね。
島田
あえて強い言葉を使いますが、社員をガンガン働かせよう、搾取しようとする企業には未来がないと私は思います。私たちは何より、社員が仕事を通じて“ワクワクする感覚”を大切にしたい。そのために、働く時間や場所を自分で選べるよう選択肢を広げました。
さまざまな施策を推し進めてきたなかで、確信したことが2つあります。1つは、私たちは自分らしくいられて心が満たされている時に、最もパフォーマンスを発揮できるということです。モチベーションは“上げる”ものではなく“上がる”もの。ワクワクしながら好きなことをして、得意なことが増えれば、どんどん結果を出せる。好循環が生まれるんです。
もう1つは、人は自分がどういう状態だとベストな結果を出せるかということを分かっている、ということです。体を動かしてから仕事すると調子がいいとか、午前中のほうがひらめきやすいとか、BGMがあると集中できるとか。仕事内容によっても、理想の状態は違うはずです。それなら、結果の出る時間帯や環境を選べるようにしようと。
実際、WAA導入後のアンケートでは、68%の人が「毎日の生活がよくなった」、75%の人が「生産性が上がった」(実感値で30%アップ)と感じています。
WorkはLifeの中にあるもの
―効果が見られたのですね。ところで、私たちはそこまで自分自身を理解しているものでしょうか。
島田
分からないのであれば、もっと自分を見る必要があるんです。