めざせ☆経営型人事 書籍に学ぶビジネストレンド 第58回 賢者に学ぶビジネスストーリー
ビジネスのトレンドを知っておくことは、経営や人材を考えるビジネスパーソンにとって必須である。
本連載では、データバンクに勤め、1日1冊の読書を20年以上続けてきた情報のプロが、
最新のビジネストレンドと、それを自分のものにするためのお薦めの書籍を紹介する。
2017年は読者の皆さまにとって、どのような1年だっただろうか。書籍の世界で見ると、特に印象に残っているのは、『うんこ漢字ドリル』(文響社)の爆発的なヒットである。小学校低学年向けを中心に、実に274万部を発行。本書のヒットにはさまざまなマーケティングのヒントが見え隠れしており、物事を「反対側」から見る重要性が学べるというのが私が持つ印象である。
ちなみに2017年上半期に最も売れたビジネス書は、『はじめての人のための3000円投資生活』(横山光昭著/アスコム)だが、ヒットの背景には、将来や投資への不安といった要素が散りばめられている。ベストセラーは、それが売れている背景や心理の考察が、これからの世の中を読み解くことにつながるのだ。
さて、ビジネスで成功を勝ち取るためには、さまざまな成功事例や失敗事例を学んでいく必要がある。そのために有効なのは、疑似体験ができる書籍だろう。文章や行間を通じて著者と対話をすることで、あたかも自分が体験したような感覚が得られる。その最たる本が、大ベストセラーである『道をひらく』(松下幸之助著/ PHP研究所)である。実に累計526万部を突破しており、いかに多くのビジネスパーソンが「疑似体験」をしているかが分かる。
2017年は、インテルの伝説の経営者であるアンドリュー・S・グローブの名著『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』『パラノイアだけが生き残る』(いずれも日経BP 社)が復刊したことにも注目しておきたい。2018年以降も「名著の復刊」が1つのトレンドになると予想している。
人事担当者が注目すべき、「賢者」に学ぶという観点の書籍を分類してみよう。
①名経営者、ビジネスパーソンによるビジネスストーリー書
②若き経営者によるビジネス指南書
③経営者の参謀による書籍
①は前述の書籍はもとより、2017年最高のビジネス書とまで称される『SHOE DOG』(右ページ参照)は必読である。NIKEの創業ストーリーを描いた同書は、書店員の方がおそろいのSHOEDOG Tシャツを着てプロモーションに努めるという力の入れようである。
②もかなり注目である。若き経営者が過去から学び、今とこれからを読み解いている眼力からは、ベテランビジネスパーソンも学ぶことが多いだろう。
③は、「名経営者に名参謀あり」とはよく言ったもので、参謀ならではの視点がユニークな書籍が多い。私自身、素晴らしい経営者本を見つけた際には、必ずセットでその参謀本を探すようにしている。