人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第63回 「この世界の片隅に」川西玲子氏 時事・映画評論家
「この世界の片隅に」
2016年 日本 監督:片渕須直
2016年11月の公開以降、大きな話題を呼んでいるアニメ作品である。2016年は日本映画の当たり年で、他にも『シン・ゴジラ』『君の名は。』という大ヒット作が生まれた。
『この世界の片隅に』は他の2作に比べると内容も地味で、当初は製作費集めにも苦労した。そのため、クラウドファンディングによって多くの支援を得てパイロット版を作成し、ついには配給に至り、公開後も口コミで評判が広がっていったのである。その経緯もまた大きな話題になった。
私は公開時に劇場で2回観て、今回執筆のためにまた観て新たな発見をした。味わい深い作品である。よく練られた繊細な物語であることに加えて、手描きの絵が素晴らしく美しい。この絵の美しさも大きな魅力になっている。
特筆すべきは、極めて日本的な内容であるにも関わらず、海外での評価が高いことだ。世界最大のアニメ映画祭である、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭(第41回)で長編部門の準グランプリに当たる審査員賞を、アジア最大の冨川(プチョン)国際アニメーション映画祭(韓国・第19回)でも長編部門グランプリを獲得した。