第33回 従業員の家族 藤原英理氏 あおば社会保険労務士法人 代表
働く人の価値観の多様化から「働き方」も変化し、現場の管理職の悩みも“イマドキ”なものになってきています。
そんなイマドキな悩みの解決方法を、社労士の藤原先生が紹介します。
第33回 従業員の家族
ある従業員の父親から、最近息子の帰りが遅く心配しているという電話があった。確かに繁忙期で忙しいが、連日残業が続いているような記録はない。率直にそう伝えたところ、タイムカードを見せてほしい、サービス残業ではないのか?などと質問攻めにされてしまった。さすがに情報開示にも限界があると思ったが、どう対応すればよいのだろうか。
「従業員の家族」の位置づけは
最近、特に若い世代では、待遇や職場環境について両親が会社に連絡してくるケースが増えているようです。そうした時代の流れに対応する形で、内定後、従業員の親に対して説明会を実施したり、入社式に親を招待したりする会社も出てきています。会社は、従業員だけではなく、従業員の家族についてもステークホルダーと考えなければならなくなってきたということです。
では、会社にとって、「従業員の家族」はどういう位置づけになるのでしょうか。まず、法律上では、従業員の親は労働契約の当事者ではないため、無関係の第三者と同じ立場になります。ただし、仮に労災等があった場合、家族が慰謝料請求権を持つことがありますし、万が一従業員が亡くなった場合には、会社に対する請求権を親が相続することもあり得ます。そういった意味では、従業員の親は潜在的な当事者といえます。また、法律的な面は別にしても、対象となる従業員のことをよく知っていることはもちろん、従業員に対して相当な影響力を持っていることも少なくありませんから、第三者として無視できる存在ではありません。