世界で闘うリーダーになる 第2回 日本人の グローバルポジションが 消滅する日
「今、日本企業にはリーダーが足りない」――。そう話すのは、日立製作所でグローバル人財戦略を担った山口岳男氏。リーダーを増やすために、まずは人材開発の担当者一人ひとりが、自身がリーダーになる意識を持ち、努力する必要があるという。日本企業がグローバルで戦う方法とは。また、グローバルで通用するリーダーシップはどのように身につければよいのか。本連載では、同氏がこれまでの経験で得た知見を交えて、5回にわたり解説する。
人材とポジションの二極分化
『フラット化する世界(邦訳名)』をご存知でしょうか。2005年にニューヨーク・タイムズ社の記者、トーマス・フリードマンが執筆したグローバル化に関する書籍です。フラット化を生じさせる要因として10の圧力を挙げるなど、示唆に富んだ興味深い本ですが、とりわけ私が興味を持ったのはグローバリゼーションには3段階あるという彼の見解です(図1)。
企業のグローバリゼーションが進展するにつれて社内で見られる現象のひとつが人材とポジションの二極分化です。国内だけをスコープとする業務や、国内の顧客だけを相手にするビジネス、つまり国内に閉じた仕事に責任を持つポジションを「ローカル・ポジション」、業務のスコープが海を越え国境を越える仕事にまで及ぶポジションを「グローバル・ポジション」とした場合、人材はローカル人材とグローバル人材のいずれかにシフトしつつあると感じています。
ただし、ローカル人材、グローバル人材のどちらに価値があるということではありません。「自分はどう在りたいか」「どうなりたいか」に向き合うことが求められているのです。この現象は日本国内を問わず、世界各地で生じています。
選択するのは自分自身
例えば、日立本社のグローバル人材部門で仕事をしていた時、私の仕事のスコープは日本を含めたグローバルでした。したがって、メールや電話は必要であれば相手の昼夜、土日に関わらず送付して、そのレスポンスを待つというのが常態でした。これに対して、アメリカとアジアの一部からはレスポンスが極めて早く、1日24時間、 土日を問わずに返事がありましたが、ヨーロッパ、とりわけヨーロッパ大陸の国からは、土日はもちろん、平日でも午後5時以降のレスポンスは来ませんでした。
それは、彼らの今までの仕事のスコープが、せいぜい時差の少ないEU諸国間のみであり、土日や平日5時以降に答える必要のあるメールが来なかったからでしょう。しかし、グローバルに人事マネジメントの展開を始めれば、どの国にいようが24hours/7days a weekの世界から逃れられないことになります。
また、先月号でお話しした事例でも同様のことがいえます。日立がIBMのハードディスクビジネスを買収して設立した会社で、営業部隊のあるメンバーは徐々にパフォーマンスを上げられなくなりました。というのも、これまではグローバルな顧客であっても営業相手は日本人、また、社内の指揮命令系統も全て日本人だったのですが、統合により指揮命令系統が変わり、会議や指示、報告を全て英語で行わなければならなくなったからです。