ITベンチャーの社歌制作プロジェクト イー・コミュニケーションズ 全社員でつくった社歌が、 一歩踏み出すきっかけに
理念浸透の方法として考えられるもののひとつに、“ 社歌”が挙げられる。社歌というと、古臭い、お堅いといったイメージもあるが、その社歌制作で社員の思いをひとつにしたのが、創業17年のイー・コミュニケーションズだ。
なぜ社歌の制作を思い立ったのか、代表取締役の佐藤信也氏に話を聞いた。
震災をきっかけに社歌制作を決意
「前に前に 前に進むんだ~ とにかく前に進むんだ~ ぶつかり悩み進むんだ~ 響かせるまで進むんだ~」
ギターの軽快な伴奏に合わせて、男女の掛け合いの声が響く。
これは、教育I Tサービス企業、イー・コミュニケーションズの社歌である。全社員が制作に携わり、2012 年に完成したというこの社歌。そもそもこの時代、しかも社歌になじみがないであろう若い社員が多い同社が、なぜ社歌をつくろうと思い立ったのか。
「きっかけは2011 年の東日本大震災です。弊社のようなベンチャー企業は、若くて野心のある社員が多いのですが、震災後、半年ほどは『何のために働いているのか分からない』『本当に頑張って働く必要があるのか』と悩む社員が少なくなかったように思います。会社としても士気が上がらない状態が続いていて、これではいけないなと。皆がひとつになれるような、新しい価値観をつくりたいと考えたんです」(代表取締役の佐藤信也氏、以下同)
ちょうどその時期は、創業来10 年間取引があった大手企業との契約も終了するタイミングだった。「自由に自分たちの力を試せる」。そんなワクワク感と将来への不安が去来していた時期に重ねて起こった震災により、社内は混沌としていた。
「皆でひとつになれるような何かをつくりたい」。そう佐藤氏が考えていたところ、懇意にしていた取引先企業の社長に勧められたのが社歌制作だったという。