CASE 3 Speee 朝会、日報、マグカップ…… 組織の共通言語をつくる カルチャー浸透の多様な施策
創業10 年のITベンチャー、Speeeは、15の項目で構成された「Speeeカルチャー」を掲げている。
社員の一斉退職をきっかけに定められたこのカルチャーは、“想い”がこもった言葉で、「こんな人と一緒に働きたい」を表したもの。それを浸透させる施策は、日常の中に散りばめられている。
何より「組織共通の価値観」として大切にしているというカルチャーについて、代表取締役の大塚英樹氏に話を聞いた。
●背景 有事に理念の必要性を実感
2007年にデジタルマーケティング事業からスタートしたIT企業、Speee。その後、BtoB・BtoCの両軸でさまざまな事業を創造し、現在はデジタルコンサルティング事業と、インターネットメディア事業の2本の柱で事業を展開している。
同社では、理念として「Speeeカルチャー」を掲げている。これは「組織成長への貢献」「プラステクノロジー」「素直・謙虚・率直」といった15の項目で構成されており、社員の行動の基本となるものだ(図)。
「父に影響を受け、子どもの頃から経営者になりたいと思っていて、経営に関するいろいろな本を読んでいました。ですから、企業として掲げるコンセプトや理念のようなものの重要性はよく認識していました」(代表取締役の大塚英樹氏、以下同)。
だが、創業から間もない時期は、メンバーが数人しかいなかったこともあり、理念の策定は必要性を感じながらも、人数が増えてからと後回しにしていた。策定のきっかけとなったのが、創業2年目のある出来事だ。組織化を図ろうとマネジャー層を採用し始めたのだが、20 人ほどいた社員のうち、7~8人が辞めてしまったのである。
「大量の退職者が出て、慌てて面談など対策を打ったのですが、根本的な解決にはなっていなかった。本当に必要なのは、これまで後回しにしてきたこと、つまり、自分たちが大切にする価値観を目に見える形できちんと定めることではないかと思ったのです」
こういう経緯で誕生することになったSpeeeカルチャーは、実際に「こんな人と一緒に働きたい」を言葉に表現するという形でつくられていった。
「経営において理論上必要というよりも、現実に起きた問題への対処を考える中で必要性を感じてつくったというのが実際のところですね。内容もロジカルに漏れなくダブりなくというよりも、今、想いが一番こもっている言葉を使おうと考えてつくりました」
カルチャーを策定し、その共有を重要視するようになると、軸がぶれなくなり、徐々に社員数も安定していったという。
●施策1 日常に溶け込ませる
このSpeeeカルチャーを浸透させるためにどのような施策を行っているのか、紹介していこう。