ATDの風 HR Global Wind from ATD <第8 回>ATD-ICEにおける「ラーニングテクノロジー」
米国で発足した人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の
日本支部ATD-IMNJが、テーマ別にグローバルトレンドを紹介します。
ここ近年、テクノロジーはめまぐるしいスピードで進化を続けており、人材開発や組織開発の分野においても、数年前には考えつかなかったような仕組み・手法・ツールが、「ラーニングテクノロジー」として実現されている。本稿では、先に開催された米ジョージア州アトランタ大会の内容をメインに、ATD-ICE(International Conference and Exposition)で紹介されたラーニングテクノロジーについて述べようと思う。
■オープニングスピーチの変遷
ATD-ICEでは、毎年1回目の基調講演の前に、ATD のCEOであるトニー・ビンガム氏がオープニングスピーチを行うことが恒例となっている。その際、よく扱うのがラーニングテクノロジーに関するトピックだ。実際、ここ3年のオープニングスピーチのテーマは、以下の通りである。
2015 年 モバイルラーニング
2016 年 ラーニング・カルチャー
2017 年 マイクロラーニング
2015 年、米フロリダ州オーランドのオープニングスピーチでは、34%の会社がモバイルラーニングを活用している、という調査結果と、いくつかのモバイルラーニングの事例が紹介された。モバイルラーニングについては、2010 年くらいからATD-ICEが発信するようになったが、その成果が現れたようだ。
2015 年は、「Bite-Size(バイト・サイズ)」というキーワードをよく耳にした年だった。Bite-Sizeは3~8分くらいの教材・コンテンツを、繰り返して学習することで、学習内容の定着を図ろうとするものである。
いつでもどこでも、好きなタイミングで学習できるモバイルラーニングは、近年、さかんに活用されるようになったが、それにつれてBite-Sizeも注目され始めた。「スマートフォン・携帯電話の1回当たりの平均利用時間は4、5分」といったデータもあり、Bite-Sizeの教材・コンテンツとは相性がいいと考えられたのだろう。
さらに、2014 年頃から話題になった「ニューロサイエンス(神経科学)」も、職場や日常業務への適用例など、より実践的なセッションが増えていたことが印象的であった。
2016 年の米コロラド州デンバー大会でのオープニングスピーチは、「ラーニング・カルチャー」をテーマとしたスピーチだった。ラーニングテクノロジーの導入についての直接的な内容ではなかったが、成功した企業・組織の31%がラーニング・カルチャーを築いていた、という調査結果や、そうした企業CEOのメッセージを紹介し、ラーニング・カルチャーの重要性を説いていた。
また、2017 年の米ジョージア州アトランタ大会のオープニングスピーチのテーマ、「マイクロラーニング」はBite-Sizeと同義だが、38%の企業が「既に使用している」、42%の企業が「将来使用したい」と答えた、という調査結果などが説明され、今後の活性化を期待させる内容であった。
マイクロラーニング導入のステップとして紹介されていたのは、以下の6項目だった。
・ Think forward(前向きに考える)
・ Think outside the classroom(教室以外で考える)
・ Be agile in your learning design(ラーニングデザインをアジャイルに)
・ Keep content short(コンテンツを短く保つ)
・ Address technology and security needs early(技術とセキュリティーの要望に早期に対応)
・ Get your leaders’ support(リーダーのサポートを得る)
また、リサーチ結果によればマイクロラーニングではビデオがよく使われていること、シスコシステムズのリサーチでは、モバイルでやり取りされるデータの50%をビデオが占めていることなどを示し、モバイルデバイスでのビデオによる、マイクロラーニングのアジャイルな学習について語った。