おわりに 「人間とは何か」を突きつけるAI
この約40 年の間に、コンピュータの情報処理能力が上がってきたことで、AIが本格的に、さまざまなビジネスや仕事に導入され始めた。「AI が人間の仕事を奪う日が来るのではないか」「将来なくなる職業」といった情報が毎日のように流れてきて、将来に不安を覚える人も少なくない。
そこで本特集では、人工知能研究者、教育関係者等の識者や、既にAIを人事や教育に活用し始めた実務家に、AIと人間の知性の違いや役割分担、そしてAI本格導入時代にも重宝される人材像について聞いた。
AIと人間の違い
人工知能研究者の中島秀之氏(OPINION1、22 ページ)は、AI が我々の職を奪うのではなく、職が“変わる”というのが正しいと言う。
「一定以上の知識は、スマホで検索すればよく、ものをつくる実行過程で必要となる物理学の方程式や、細かい計算なども、AIに任せられるようになる」、よって、こうした仕事はAIに置き換わる。人間には、AIを使うための「情報論的思考」、AIを使って何がしたいのかを考える「どういう社会にしていきたいかを常に考える力」、そして実行時に人を動かす「人と人をつなぐ力」が必要だと述べた。
また、ヤフーのチーフストラテジーオフィサーである安宅和人氏(OPINION2、26 ページ)は、「AI にできないこと」(課題解決におけるAIのボトルネック)を明確に述べており興味深い。
<AIのボトルネック>
・意志がない
・人間のように知覚できない
・事例が少ないと対応できない
・問いを生み出せない
・枠組みのデザインができない
・ヒラメキがない
・常識的な判断ができない