CASE 1 アサヒグループホールディングス 大チャレンジ! 次世代経営者育成に活用 幹部社員のキャリアパスや育成を AIと共に考える時代到来
アサヒグループホールディングスは、2017年5月より、AIからの提案をキー人材(次世代経営者候補)のキャリアパスや育成、タレントマネジメントに活かすという、世界でもまだ珍しいチャレンジを始めた。
同社は9月1日に行われたイベント「CONVERGE TOKYO 2017」で、「まだ緒に就いたばかり」と謙遜しながら概要を説明。
その発表内容から、AIをどのように活用しているのかについて、エッセンスを紹介する。
●背景① 人材把握と育成の必要性
アサヒグループホールディングスは、アサヒビール・アサヒ飲料・アサヒグループ食品などを傘下に置く持ち株会社である。グループで酒類・飲料・食品・国際・その他の大きく5つの事業を展開しており、昨年は1兆7 千億円を売り上げた。国内の酒類事業がその55.7%を占めるが、近年、海外も含めた他事業が伸びているという。2000 年代後半までの酒類以外の拡大策や、それ以降の飲料や酒類のグローバル化が実を結んできているようだ。
そうした中、酒税法の改正や、グローバルな業界再編等々の環境変化に伴い、人事の役割も変化してきているが、ホールディングス人事部門の役割は主に以下の4つであると、人事部門プロジェクトシニアマネジャーの柴田勝氏は語る。
①人的生産性の向上……ITの活用などを通した、働き方改革や健康経営の推進
②人事のグローバル化……海外会社の人事面でのガバナンスや、人事部門を含めたダイバーシティ推進等
③人事制度改革……上司と部下のコミュニケーションを密にする仕組みの構築等
④人材育成……次世代経営人材の育成支援や新しい人材マネジメントの仕組み構築
中でも4つめの次世代経営人材育成は、「グループの共通資産として、ホールディングスが事業会社に直接関与していく必要がある」(柴田氏、以下同)。今回の取り組みは、ここにAI を活用しようというものである。
●背景② キー人材の育成上の課題
AIシステムの導入には、以下のキー人材育成上の課題解決や、人材パイプラインのロングリスト化への期待がかかっている。
キー人材の育成上の課題の1つめは、定性情報を含めた人事情報の管理である。必要な人事情報がグループ各社にバラバラに保管されており、一元管理ができていなかった。
2番目は、人事情報の分析・可視化だ。情報を集めるだけではなくそれらを分析し、どういったところに課題があるのかを経営と人事で共有する必要があった。
3番目は、サクセッションプラン(後継者育成計画)の選択肢・精度の向上である。人事情報を分析・可視化したうえで、具体的に誰をどのように育てていくかを検討しなくてはならないが、そこまでには至っていなかったのである。