OPINION1 私たちは、何をどうしていきたいのか 人事がAIになる時代に 必要となる3つの能力とは
「AI」という言葉を聞かない日はない昨今、急激な社会の転換が進みつつある。
企業や、企業の人事部門は、来たるAI 時代に備えて、どういう準備をするべきなのか。
今後、必要となる能力や人材とは。
人工知能研究者である中島秀之氏に話を聞いた。
AIができること
昨年、AIの書いた小説が星新一賞で一次審査を通過したのをご存じだろうか。我々の仲間がつくったAIなのだが※1、あらかじめテーマや登場人物の設定などの筋書きをプログラミングしておき、たくさんのパターンでストーリーを書き出させた。それらの作品群から、人が面白いと感じるものを選定し応募したものだ。
また、AI がプロ棋士との対局で勝った※2というニュースも記憶に新しいことと思う。
ほんの40 年前の1970 年代には、それどころではなかった。やりたいことがあってもコンピュータの情報処理速度が圧倒的に遅く、計算に1週間も1カ月も要していた。
40 年の間に何が起きたのかといえば、コンピュータの速度が急速に上がってきた、ということに尽きる。情報工学の法則に、「ムーアの法則」がある。これは半導体の集積率、コンピュータの速度が2年間でほぼ2倍まで増えるというもの。法則に則り、40年で100万倍まで増えたことで、コンピュータでできることが飛躍的に増えた。AI作家やAI棋士もそのひとつである。
また、深層学習の威力については、コンピュータに「眼がついた」とも表現している。かつては、工業用ロボットにしても、特定の位置に固定した部品をつかませ、「この点からこの点まで移動させる」という情報を全て書き下したプログラムで制御していた。それが、「眼がついた」ことで、機械自身がカメラで位置や形を認識しながら、勝手に学ぶことができるようになった。職人や専門職の、言葉で伝えることができない「暗黙知」さえ、AI が見て学習できるようになったのだ。
※1 松原仁・公立はこだて未来大学教授が率いる「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」。
※2 2017年5月、将棋の佐藤天彦名人にPonanzaが勝利するなど。
AI時代に訪れる変化とは
こうしたAIの進化により、社会の変化のスピードが加速している。中でも大きく変化するのが「職業」である。オズボーン・レポート※3 等で、10 ~ 20 年後には、「職が今より半分になる(人間が行う仕事の約半分が機械に奪われる)」と騒がれているが、「今ある職業が変わる」という表現が正しい。私自身、就職の際、親に「国鉄なら絶対安定しているから国鉄へ行け」といわれたものだ。直後、国鉄は民営化され、“絶対的安定”はなくなった。このように、今の社会ありきで物事を考える人が多いが、今後起こるのは、全く別次元の変化である。
※3 英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン、カール・フレイ著の論文『雇用の未来―コンピュータ化によって仕事は失われるのか』。日本では両氏と野村総合研究所の共同研究で、10~20 年後には、国内の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能になることを示唆した。