巻頭インタビュー 私の人材教育論 学びによって変わり続けることこそ 商売の鉄則
イオングループCEOの岡田元也氏からイオン九州の立て直しを託され、2014 年5月、同社社長に就任した柴田祐司氏。
グループ内でも業績堅調だったイオン北海道の社長を務めていた柴田氏が、九州改革のために力を注いだのは、現場の意識を変えることだった。
トップの思いを伝えるコミュニケーションに尽力し、「自分で考え・自分で動き・自分を変える」大切さを語り続ける。
その背景には、常に転機をチャンスに変えてきた、柴田氏ならではの人生観があった。
就任3年目に増益、黒字転換へ
―2017年2月期は黒字決算となりました。
柴田
社長就任以来、丸3年かけて、ようやく少し明かりが見えてきたというのが、正直なところです。同じデフレといっても九州には九州の状況があり、他の地方とは傾向が異なります。3年前こちらに来て、最初に気づいたのがこの地域差でした。
九州はディスカウンター(格安量販店)発祥の地だけあって、安売り店がひしめき合っています。そうした中で、当社はGMS(総合スーパー)の本来あるべき姿を見失っていました。ディスカウントショップに対抗して価格を下げることばかりに意識が集中してしまい、GMSに期待される品揃えが実現できていなかったのです。しかし、自分たちの本来の役割を考えれば、ディスカウンターとは違う土俵で戦うべき。この反省から、経営方針の転換に踏み切りました。初年度は大きな赤字になるであろうことは覚悟のうえでした。
―2018年2月期も増益を見込まれています。
柴田
3年目にしてようやくプラスになりましたが、決して楽観視はしていません。例えば酒税法改正で酒類の値上げが行われるなど、逆風は依然として強い。また、既に九州には大型店の出店余地はほとんど残っていません。
今後はスクラップ・アンド・ビルドに力を入れると共に、小型店に注力していきます。コンビニとの差別化が課題です。さらに、社会の変化に対応すべく、新しいフォーマットづくりに力を入れる必要があります。その意味で、公園やヨガ教室なども併設するイオン乙金(おとがな)ショッピングセンター(福岡県大野城市)に期待しています。「子育て」「地域コミュニティ」「利便性」をキーワードに、新しいコミュニティのかたちを具現化した施設で、2017年7月にグランドオープンしました。
―イオングループでは「グランド・ジェネレーション」をコンセプトに高齢者対応を強化されていますね。
柴田
高齢者についても地域性を踏まえて考える必要があります。1店当たりの商圏人口の少ない九州で、シニアに的を絞り込むと商売は成り立たない。それより利便性を重視し、1カ所で必要なものが全て揃う店にすべき。シニアだからといって、若い人が好む肉を食べないかといえば、そんなことはないでしょう。今後必要なのは、シニアも含めて増え続ける単身世帯のニーズ対応です。
求められる意識の変革
―就任後の3年間で、最も強く訴えたことは何だったのでしょうか。
柴田
何より求めてきたのは、一人ひとりが自分で考える姿勢です。例えば、競合店が安売りすると、反射的に安さを競おうとする。本部からの指示に何も考えずに従う。いずれも受け身の対応で、お客様にどう応えるべきか自発的に考える姿勢に欠けています。もちろん本部の指示を無視してはなりません。けれども、ここは九州なのです。まず、九州のお客様ニーズを起点に考えた品揃えや接客を考えなければ、私たちの存在意義はなくなってしまいます。お客様が何を求めているのかを常に読み取り、実践する姿勢こそ原点です。