人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第61回 「私の、息子」川西玲子氏 時事・映画評論家
「私の、息子」
2013年 ルーマニア 監督:カリン・ぺーター・ネッツァー
よほどの映画通でない限り、ルーマニア映画に関心を持つ人は少ないだろう。ルーマニアに関する日本人の認識はおそらく、チャウシェスク政権崩壊で止まっているのではないか。あれから四半世紀、ニュースやヨーロッパ映画などに出てくるルーマニアは、常に犯罪集団や人身売買絡みの話題と結びついている。あまり良い描かれ方はしていない。
だがルーマニア映画は今や、ヨーロッパ映画界で注目の的である。その理由は、三大映画祭でいくつも賞を取っているからだ。困難な状況にあって描くべき題材が多く、それが関心を集めているという面もあり、監督たちの志も高い。
2007 年には『4ヶ月、3週と2日』がカンヌ国際映画祭最高賞、『汚れなき祈り』が2012年の同じくカンヌ国際で脚本賞に、そして本作が2013年にベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した。以後も『エリザのために』が、2016年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞している。