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OPINION3 個々の「主観」と「直観」をもっと頼りにしてもいい 思考の行き来で 見えない価値を判断する “コンセプチュアル思考”
客観的に捉える、論理的に考える―
これらはビジネスの世界で、当然のように重視されてきたことだ。
だが「それだけでいいのか」と指摘するのは、プロジェクトマネジメントコンサルタントの好川哲人氏。
余計な要素をそぎ落とすロジカルな思考よりも、さまざまな要素を統合していく思考法により、深い解決策を導き出すことができるという。
その思考法について、話を聞いた。
壁を白くすることは正しいのか
壁を白く塗ってほしい―そう頼まれた時、あなたは白いペンキで壁一面を塗ることを選ぶだろう。だが、刷毛やローラーを手にする前にもう一度よく考えてみてほしい。依頼者は、本当に壁が白くなることを望んでいるのだろうか。
ビジネスの場においても、似たようなことがある。トラブルに見舞われた際、事象の解決だけに着目するような場合だ。だが、そのような解決の仕方では、その瞬間はよくても、場面が変わればまた同じようなトラブルに見舞われる。
大切なのは、全体像を捉え、複数の事象から問題が起こる大元を探り、根本的な原因の解消を図ることである。それを可能にするのが、「コンセプチュアル(概念的)」な考え方だ。
このような視点で考えれば、例えば冒頭の壁の話の場合、依頼者の相談の本質は、「壁を白くする」ことではなく、「壁の汚れを目立たなくする」ことにある可能性にも気づく。その際は、白いペンキで汚れを塗りつぶすよりも、もっとよい解決策があるだろう。
このように、概念的な視点や考え方が求められるのは、問題解決を行う場面に限らない。意思決定、構想や計画の立案、対人行動の場面でも、概念化のプロセスがなければ、本質を見失ってしまいがちである。そこで必要になるのが、「コンセプチュアル思考」である。
本質を捉えて概念化させる
コンセプチュアル思考を知るには、前提となる「コンセプチュアルスキル」を説明しておく必要がある。
■コンセプチュアルスキルとは
プロフィール
好川哲人(よしかわ てつと)氏
プロジェクトマネジメントオフィス代表 シニアコンサルタント
MBA、技術士(情報部門)。1982 年神戸大学大学院工学研究科システム工学専攻修了、三菱重工業システム技術部勤務等を経て、現在は技術経営のコンサルタントとして、新規事業開発や商品開発のプロジェクトを数多く支援。イノベーションリーダーのトレーニングを手掛ける。独自に開発したプロジェクトマネジメント「PM st yl e」は「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトとし、本質を学ぶことを主軸に置く。
[取材・文]=田邉泰子 [写真]=編集部